第4話:プルプルとの遭遇、そして「絶対服従」
第4話:プルプルとの遭遇、そして「絶対服従」
白亜の邸宅を目指し、シルスたちは結界の東側に広がる「始まりの森」を歩いていた。
道なき道を進んでいるはずなのに、不思議と足取りは軽い。転生前の自分なら、十歩歩いただけで息を切らしていただろう。だが今のシルスは、深い腐葉土を蹴る感触さえも楽しくて仕方なかった。
「……ん? あれは……」
視界の端で何かが揺れた。鮮やかな若草色をした茂みの陰に、透き通った水色。陽光を反射して輝く「塊」が、独特のリズムで上下に跳ねている。
「おや。さっそく現れましたね」
アリステアが歩みを止める。「このドーム内は高濃度の魔素で満たされていますから。自然発生的に下位魔物が生まれるのです」
「これって……スライムか?」
シルスの心拍数が跳ね上がる。スマホの画面越しに何度も見た、ファンタジーの代名詞。恐る恐る近づくと、スライムは逃げるどころか、ふるふると全身を震わせてシルスを見上げてきた。
「危ないからあんまり近づかないでね、ご主人様。服を溶かす酸を持ってたりするから」
ミーナが短剣の柄に手をかける。だが、シルスはそれを手で制した。
「大丈夫だ。……試してみたいんだよ、神様にもらった力を」
シルスは膝をつき、スライムに向かって静かに右手を差し出した。
(……おいで。怖くないよ。俺と一緒に、ここで暮らさないか?)
その瞬間。シルスの脳内に、澄んだ響きが鳴り渡った。
『固有スキル:**【絶対守護者の友愛】**を発動します――完了しました』
直後、スライムの体が淡い光に包まれた。一拍置いて光が収まったとき、ただの水色だった体は、まるで高級なサファイアのように深く、透き通った蒼色へと進化していた。
「ぷる、ぷるるんっ!」
スライムが勢いよく跳ね、シルスの胸元に飛び込んだ。頬を擦り付けるようにしてプルプルとのたうつ。ひんやりとしていて、どこか甘い果実のような匂いがした。
「……嘘でしょ? 下位魔物のスライムが、一瞬で『上位個体』に変異したわよ……」
ミーナが呆然と呟く。
「主様の魔力があまりに純粋で強大すぎたのでしょう。テイムと同時に、対象のランクを強制的に引き上げたようですな」
「すごいな……。お前、今日から名前は『プル』だ。よろしくな」
「ぷるっ、ぷるる!」
不老不死。最強の双子。そして、可愛らしい相棒。
ドームの中に築き上げる「最高の引きこもり生活」は、予想を遥かに超えるスピードで充実し始めていた。




