第39話:【サブストーリー】新章:迷い込んだ「社畜」と、沈黙の執事
第39話:【サブストーリー】新章:迷い込んだ「社畜」と、沈黙の執事
【新キャラクター視点:佐藤健斗(24歳)】
気がつくと、俺は真っ白な廊下に立っていた。
さっきまで、新宿の駅ビルで「SNS広告の炎上対応」に追われていたはずだ。不眠不休の3日間、意識が遠のいた瞬間にトラック……ではなく、単なる「過労による立ち眩み」で階段から落ちた記憶がある。
「……ここ、どこだ? 異世界転生ってやつか?」
目の前には、ファンタジー小説で見るような重厚な扉。だが、その横にはなぜか**「非接触型のカードリーダー」**のような魔導具が付いている。
「認証……失敗。未登録ノ生命体、検知」
空間から合成音声が響いた。すると、扉が音もなく開き、一人の男が姿を現した。
完璧にプレスされた燕尾服、冷徹なまでに整った顔立ち。
「……三千年ぶりの『同郷人』ですか。これはまた、主様の眠りを妨げる不純物ですね」
「えっ……あ、あの、俺、サトウって言います。ここ、もしかして勇者の神殿とか……」
俺の言葉を、執事風の男――アリステアが遮った。
「残念ながら。ここは『働いたら負け』という教義を極めた、最高神の寝室前です。そして貴方、ひどい臭いがしますね……『社畜』の、腐った魂の臭いです」
アリステアがパチンと指を鳴らす。
すると、床から「ぷるぷるした青いゼリー」が湧き出し、俺のスーツを剥ぎ取り、代わりに極上のパジャマを着せ始めた。
「主神シルス様が定めた『聖域労働基準法』により、この空間内でのサービス残業、ストレス、および『やる気』は禁止されています。貴方はこれより、強制的に一万時間の『ニート研修』に処されます」
「え、ちょ……俺、仕事が……締め切りが……!」
「黙りなさい。……ここでは、時間は主様の夢の中にしか存在しないのです」
俺は、三千年前にこの場所を支配したという「伝説のサラリーマン」が残した、自動マッサージチェアへと放り込まれた。
これが、俺の新しい人生――**「社畜更生施設としての聖域」**での初日だった。




