第34話:親離れのプルプル――スライム独立宣言と「空の巣症候群」
第34話:親離れのプルプル――スライム独立宣言と「空の巣症候群」
聖域の北東部、かつて未開拓だった森が、一晩で「幾何学的な白亜の都市」へと変貌していた。
中心にそびえ立つのは、粘液を圧縮結晶化させた地上100階建てのビル。スライムたちの新都**【ゼラチン・シティ】**である。
「……なぁ、アリステア。あいつら、最近俺の部屋に掃除に来ないと思ったら、あんなもの建ててたのか?」
「はい。プル殿より、独立自治権の要求書が届いております。『マスター、卒業デス。自分タチデ、働キ、マスターヲ、養ウ。ソレ、孝行』とのことです」
プル(今や最高級のスーツを纏った擬人化形態に近い姿)が、シルスの前で深々と頭を下げた。
彼らはもはや「主様に守られる魔物」ではなく、「主様を年金で支える超エリート集団」へと進化したのだ。
「……寂しいじゃないか。あんなにプルプルして、俺の足元で寝てたのに」
49歳のシルスを襲ったのは、予期せぬ**「空の巣症候群」**だった。
スライムたちは完璧な経済システムを回し、世界中から集めた「究極の安眠枕」や「伝説の高級酒」を次々とシルスの部屋に送り届けてくるが、部屋は静まり返っている。
「ご主人様、そんな顔しないでよ。あいつら、週末には『バーベキュー』をしに帰ってくるって言ってるわよ」
ミーナが苦笑いしながら肩を叩くが、シルスは一人、庭の隅にある「かつての小さなスライムハウス」を見つめて、少しだけ遠い目をするのだった。




