第30話:スライム・エコノミクス――支配された通貨と「盆ちゃん」の恐怖
第30話:スライム・エコノミクス――支配された通貨と「盆ちゃん」の恐怖
数ヶ月後、シルスが「マナ・ネット」でニュースをチェックしていると、奇妙な記事が目に入った。
『速報:世界共通通貨ゴールド、大暴落。スライム発行の電子通貨【マナ・コイン】が全大陸の基軸通貨へ。』
「……え、何これ。マナ・コインって何?」
慌ててアリステアを問い詰めると、彼は涼しい顔で答えた。
「主様の『丸投げ』に従い、プル殿が世界経済を最適化いたしました。現在の人間諸国は、スライムたちが発行する信用通貨なしではパン一つ買えない状態です。ちなみに、各国の中央銀行の総裁は、全員プル殿が派遣した『インテリ・スライム』に入れ替わっております」
ドームの窓から外を見ると、結界の向こう側にあった「門前町」は、今や巨大な未来都市へと変貌していた。
そこには、スライムの指示通りに働く人間たちと、彼らを「評価」するドローン型スライムが飛び交っている。
「……やりすぎだ! 俺はただ、自分の平穏を守りたかっただけなのに、なんで世界征服が始まってるんだよ!」
「マスター、御安心、下サイ。現在、世界ノGDPノ、80%、ガ、マスターノ、寝室、ノ、維持費ニ、計上、サレテオリマス。貴方ハ、宇宙一、高貴ナ、引きこもり、デス」
足元でプルが、49歳のシルスも見たことがないような「極上のシルク製のクッション」を差し出しながら報告した。
聖域は今、物理的な結界を超え、経済という見えない糸で世界を縛り上げた。
シルス(盆ちゃん)は、自分が作り上げた「あまりにも有能すぎる部下たち」に、逆の意味で震え上がるのであった。




