第22話:ドーム・アップデート――魔導ネットと「プル・チャンネル」
第22話:ドーム・アップデート――魔導ネットと「プル・チャンネル」
山頂で見つけた「管理コンソール」の操作に慣れてきたシルスは、ある夜、とんでもないことを思いついた。
「……なぁ、アリステア。このコンソールの演算能力とドーム内の魔素通信網を使えば、擬似的な『インターネット』が作れるんじゃないか?」
49歳の元日本人が最も切望していたもの。それは、情報の海に溺れる「ダラダラした時間」だった。
シルスは**【地球知】**からインターネットのプロトコルと通信概念を抽出し、コンソールへと流し込んだ。
翌朝、ドーム内の全スライムの脳内(核)に、**【魔導ネットワーク(通称:マナ・ネット)】**が接続された。
「マスター、コレ、凄イデス。知識ノ共有、一瞬デス」
プルが震えながら、空中投影された「魔導タブレット」を操作する。
だが、シルスの予想を超えていたのはスライムたちの「発信欲」だった。
わずか数時間後、マナ・ネット上に**「動画共有プラットフォーム」**が誕生。
「ハロー、マナ・ネット! 今日は『アリステア教頭の隙を突いて昼寝する方法』を検証してみたよ!」
そんなタイトルと共に、透明化スキルを駆使したスライムYouTuber「プル・チャンネル」が大流行。さらには「ミーナ先生の激辛クッキング」や「ルミの『私、スライムに負けました』号泣生配信」がドーム内を席巻した。
「……シルス様、私の威厳がマナ・ネットという場所で切り売りされているのですが」
アリステアが眉間に皺を寄せるが、シルスはベッドでスマホ型の魔導具をいじりながら笑った。
「いいじゃないか。これでみんな退屈しないで済むし、俺も寝ながらスライムたちのショート動画が見れるんだ。最高だよ」
聖域は今、異世界で唯一の「超高度デジタル社会」へとアップデートされたのである。




