第20話:ルミの家庭訪問――大賢者の敗北と、究極のおもてなし
第20話:ルミの家庭訪問――大賢者の敗北と、究極のおもてなし
ドームの境界線に、かつてないプレッシャーが漂った。
「我が弟子ルミを誑かし、不当に拘束する邪教の主よ! 出てくるがいい!」
現れたのは、外界で『北の至賢』と畏怖される超大賢者、バルカス。ルミの師匠である。
シルスは溜息をつき、アリステアに「適当に接待して追い返して」と頼んだ。
だが、アリステアの「接待」は、バルカスの想像の斜め上を突いた。
「ようこそ、聖域へ。私は執事のアリステアです。まずは『地球知』由来の最高級玉露と、スライム製の手揉みカステラをどうぞ。お疲れのようですので、魔力循環マッサージ機も用意しております」
「ふ、ふん、小癪な……。……むっ、この茶、なんだ!? 魔力が……洗練された魔力が細胞の隅々にまで……! 旨すぎる!」
怒り狂っていたバルカスは、わずか十分で骨抜きにされた。さらに、変わり果てた(スライムに算数を教わっている)ルミの姿を見て愕然とする。
「ルミ! 何をしている、そんな魔物相手に……!」
「師匠! 見て、この『量子魔導論』の美しさを! 私たちが今までやってきた魔法は、ただの火遊びだったのよ!」
バルカスはルミのノートを一瞥し、そして膝を突いた。
「……これは、神の数式か……。私が一生をかけて辿り着けなかった答えが、この青いゼリー状の生物によって証明されている……」
夕方、バルカスは「私も……入学してもよろしいでしょうか?」という言葉を残し、スライムたちの末席に座り込んでいた。
「……アリステア。あのお爺ちゃん、帰る気ないぞ」
「主様、光栄なことですな。また一人、聖域の管理コストが上がりました」




