第19話:聖域の中間試験――世界の真理と、折れた心
第19話:聖域の中間試験――世界の真理と、折れた心
聖域アカデミー開校から一ヶ月。アリステア教頭の冷徹な声が響いた。
「本日より三日間、中間試験を実施します。落第者は一週間の『雑用スライム化(物理)』、満点者には主様特製の『地球風パフェ』を授与します」
天才少女ルミは、不敵な笑みを浮かべていた。
(フン、スライム相手に遅れを取るはずがないわ。私は宮廷魔導師候補なのよ!)
だが、配られた試験用紙(スライム粘液製)を見た瞬間、彼女のペンが止まった。
* 第1問: 「熱力学第二法則と火属性魔術の干渉における、エントロピー増大の抑制式を記述せよ」
* 第2問: 「並行世界からの魔素流入を仮定した際、1kmドーム内の因果律定数を0.003ずらすための最短術式を構築せよ」
「……な、何これ。意味がわからないわ。魔法は『祈り』と『才能』でしょう!? なんで数式が必要なのよ!」
絶叫するルミの隣で、プル(モノクル装着)がサラサラと音を立てて解答を書き終えた。
「プル……。マスターノ『地球知』、最高デス。宇宙ハ、計算、デ、デキル」
開始五分。スライムたちは全員満点で退出。残されたルミは、解答用紙に「魔法は愛です」とだけ書き残し、泡を吹いて倒れた。
シルスは縁側でパフェを食べながら思った。
「……教えすぎたかな。でも、俺もこれ、半分以上解けないんだけどな」




