第18話:教育実習生、現る――天才魔導少女と「神の教室」
第18話:教育実習生、現る――天才魔導少女と「神の教室」
そんな魔境と化したドームの境界線に、一人の少女が辿り着いた。
外界で「百年の一人の天才」と謳われる若き魔術師、ルミ・アルテミス(15歳)。彼女は、勇者カエルを退けた『伝説の賢者』の噂を聞きつけ、弟子入りという名の偵察にやってきたのだ。
「フン、所詮は辺境の噂。この私が、真の魔術の深淵を見せつけて……」
彼女は偶然にも、スライムたちがメンテナンス中だった結界の隙間(意図的に作られた換気口)から、ドーム内へ侵入することに成功した。
だが、そこで彼女が目にしたのは、自身の知性を根底から揺さぶる光景だった。
庭の隅で、一匹の小さなスライムが、黒板に**「高次元魔導数式」**をスラスラと書いていた。それは、ルミが所属する魔術学院の教授たちが一生をかけても解けないとされる、古のエルフの難問だった。
「……え? ス、スライムが『因果律の固定式』を解いているの? しかも、その解法、私が見たこともないほどエレガント……」
さらに歩を進めると、別のスライムたちが「ミーナ流・暗殺術」の訓練として、時空を僅かに歪めて瞬間移動を繰り返していた。
「……転移魔術を、無詠唱で連発!? 嘘でしょ、国家宮廷魔術師でも不可能なはずよ!」
そこへ、パジャマ姿で欠伸をしながら、プル(モノクル装着済み)を引き連れたシルスが現れた。
「あー、また不法侵入か。……君、誰?」
「あ……わ、私はルミ・アルテミス! 貴方がここの主、伝説の賢者ね! 私を弟子にしなさい!」
必死に虚勢を張るルミ。だが、足元にいたプルが、彼女の杖を一瞥して無慈悲に告げた。
「ソノ、杖ノ、回路設計……古臭イ。効率、マイナス30%。……主様、コノ子、幼稚園児並ミノ、学力デス。弟子、不適格」
「よ、幼稚園児……っ!?」
天才少女ルミは、スライムに学力で完敗した事実にその場に崩れ落ちた。
49歳の盆ちゃんは、泣きじゃくる美少女を前に、困ったように頭を掻いた。
「……まぁ、せっかくだし、スライムたちの『掃除の授業』から受けていくか? 雑用くらいなら教えられるぞ」
こうして、聖域には初めての「人間の生徒」が加わったが、彼女がスライムたちのエリート教育についていけるようになるまでには、さらに気の遠くなるような時間が必要なのであった。




