第15話:学園祭――禁断の「放課後」
第15話:学園祭――禁断の「放課後」
「アリステア、ミーナ……。俺、教育を間違えたかもしれない」
シルスがソファでぐったりしていると、ミーナが呆れたように言った。
「ご主人様、スライムたちに『適当』っていう概念を教えるのを忘れてるのよ。彼ら、全力でマスターの期待に応えようとしてるんだから」
教育の軌道修正を試みるべく、シルスは「学園祭」を開催することを提案した。
「勉強ばかりじゃダメだ。自由な発想で、自分が面白いと思うものを展示したり、出し物をしたりしてくれ」
これこそ、彼らの個性を引き出すチャンスだとシルスは信じた。
そして当日。ドーム内に作られた「特設会場」に、シルスは招待された。
「マスター、我ラガ制作シタ、自由研究ノ成果デス」
そこに展示されていたのは、以下のものだった。
* 「全自動・昼寝最適化ポッド」:
スライム100匹が毛布状に重なり、シルスの体温、血圧、夢の内容をリアルタイムで監視・調整し、常に「人生最高の睡眠」を提供する生体ユニット。
* 「地球再現・VR迷宮」:
スライムたちがシルスの記憶をスキャニングし、49年間の人生(特に会社時代の満員電車や深夜残業)を追体験できるアトラクション。「苦難を知ることで、今の幸せを噛みしめる」という教育的配慮。
* 「聖域製・対神決戦兵器」:
アルシエルが再び乱入してきた際に、物理的・概念的に「出禁」にするための、因果律を歪める巨大な粘液砲。
「……やりすぎだ! 全体的に重すぎる!」
シルスが叫ぶと、スライムたちは「コレデハ、不足、デスカ……?」と悲しげにプルプルと震え出した。
49歳の男が教えた「義務教育」は、ドームという閉鎖環境の中で、魔物たちの忠誠心と融合し、**「主様を絶対に甘やかすための、超合理的・超技術的・超管理社会」**へと結実してしまった。
「……まぁ、快適なのは間違いないんだけどさ」
シルスは、スライムたちが作った「全自動・ビール注ぎ機」から黄金の液体を受け取り、溜息混じりに笑った。
聖域の学校編。それは、シルスが「主様」として崇められながら、スライムたちの「教育という名の狂気」に優しく包み込まれていく、新たな章の始まりであった。




