第10話:スライム議会の誕生――象徴国王シルスと「怠惰の憲法」
第10話:スライム議会の誕生――象徴国王シルスと「怠惰の憲法」
ドーム内の朝は、今や規則正しい「鐘の音」で始まるようになった。
それは、進化したスライムたちが鐘楼スライム(ベル・スライム)を叩いて鳴らす、作業開始の合図だ。
「……なぁ、アリステア。庭に掲げられているあの巨大な石板、何て書いてあるんだ?」
寝癖だらけのシルスがバルコニーから指差した先には、いつの間にか建立された白亜の石碑があった。
「主様、あれは昨日、プル殿を中心とした『第一回ドーム代表者会議』にて採択された**【聖域基本憲章】**にございます」
アリステアが慇懃に読み上げた内容は、シルスの想像を遥かに超えていた。
* 第一条: シルス様は聖域の象徴であり、至高の存在である。
* 第二条: 全住民(魔物・人形)は、シルス様の「昼寝」および「ダラダラ」を全力で守護する義務を負う。
* 第三条: ドーム内の実務・環境維持は、各部会のスライムが自治を行い、シルス様の手を煩わせてはならない。
「……俺、いつの間に『象徴国王』になったの?」
「ぷるっ! マスター、シンパイ、ナイ。ワタシタチ、カンリ、スル!」
足元でプルが誇らしげに体を震わせる。プルは今や、シルスの魔力と「地球知」から漏れ出た「組織論」や「マネジメント手法」を完璧に理解し、スライムたちを「清掃部会」「食糧部会」「防衛部会」へと組織化していたのだ。
「ご主人様、よかったじゃない。これで本当に何もしなくて済むわよ」
ミーナがクスクスと笑いながら、スライムたちが作成した「今週の昼寝スケジュール案」を差し出してきた。
シルスは、自分の知らない間に「民主主義的な独裁国家」のトップに祭り上げられた事実に戦慄しつつも、差し出されたスケジュールの完璧な効率性に、思わず「……いいね」と頷いてしまうのであった。




