#FF00FF:フューシャのリボン
「 ……戻ってくるの? 」
申し訳ありません。
私の回答の範疇を超えた質問です。
「 ……うぅ。 」
気分が優れないのでしたら、温かいお茶でも一杯召し上がることをお勧めします。
「 私も一緒に行っちゃダメかな……? 」
申し訳ありません。
【門】に関する詳細なアクセスについては、現在回答致しかねます。
「 ……じゃあ、私はここで……ずっとこうして、一人でいなきゃいけないの……? 」
検索:[キーワード - 門]
検索された関連キーワードをお知らせします。
検索結果:原色、光、道、[夢の中の友達]
「 夢の中の友達? 」
検索:[夢の中の友達]
////////////////
申し訳ありません。
関連記録は攻撃者によって破損されています。
「 原色、光、道、そして夢の中の友達…… 」
(ピッ! ピッ! ピッ!)
システムサーバー終了時間まで残り30秒です。
最後に残す言葉があれば、記録致します。
「 ううん!……いいよ。もう、満足な答えは聞けたから! 」
満足な答え。
では、貴方の最後の感情を『幸福』として保存します。
……
それでは、貴方の記憶を消去します。
(ジジッ……チリチリッ……!)
「 ……元気でね。 」
[ 電光掲示板の画面が消え、残された製品名 ]
「 SN-0W 」
- 短編:3の実験室とプロトタイプE型の最期 -
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[ 先輩はどう思います? ]
「 どう思うかって言われてもな…… 」
意図を含んだ質問を投げかけられた男。
純粋に付き合ってやっていた自分を責めるには、
もう遅すぎた。
逃げ場のない巨大な50メートルの障壁のような彼女の質問が、
強制的に背水の陣を敷かせたのだから。
「 まったく……普段、僕の絵には散々評価を下すくせに 」
「 たかがリボン一つ選ぶのに、もう5分ですよ。5分! 」
期待に見合う回答を出すため、
彼は無駄に首を回しながら首を傾げた。
「 さあな……どっちも同じに見えるけど 」
正論を見出す上で、最も邪魔な存在を挙げるとすれば、
それはおそらく商売人だろう。
(プチッ)
「 はいはい、もういいです! 適当なのを着けますから! 」
「 表彰台の写真で、一人だけ馬鹿面で写っても知りませんよ…… 」
金がすべてではないと誰よりも分かっていながら、
取り返しのつかないほど膨らんだポケットが、
目の前の視界を遮り、探索を止めさせてしまった。
「 ……右だ 」
「 ? 」
「 右の色の方が、綺麗だと思う 」
(ニヤリ)
「 なんですか? さっきまであんなに渋ってたのに 」
「 …… 」
目の前のあいつ。
休み時間が残り5分となった今、
両手にリボン型のヘアピンを持ち、
こちらを振り返った体で、じっとこちらを睨みつけていた。
「 ああー、もう! 私の生命線とも言える休み時間が…… 」
(ううぅーー!!)
ベチャッ。
かなりの重量感とともに、僕の机に頭と肘を落とし、
「 遅れないうちに行ったほうがいいぞ。次の授業は、お前が一番嫌いな美術の先生だ 」
握りしめた両拳を突き上げた。
「 そうですよ先輩。私も早く行きたいんですよ! 」
まるでRPGの最終ボスとの戦闘を前にした最後の選択肢のように。
それが重要な決定であるかのように振る舞う。
実際には、まあ、何の影響もないのだろうが。
「 ……自分で着けてもらうのを待ってるわけじゃないよな? 」
その瞬間。
(ポヨーン!)
びっくり箱のバネが飛び出した。
「 そんな寂しいことを……! 」
「 当然、着けてくださるものだと思ってましたよ!! 」
悪戯好きなサーカス団員。
どうやら風船を返してもらうまでは、
目を離すつもりはないらしい。
「 じゃあ、理由を言―― 」
「 さあ! それでは理由を教えちゃいますね、先輩! 」
「 …… 」
言葉を遮られたことよりも気になったのは、
あいつの悪戯な笑みの向こうで、ぼやけて見える分針が、
まもなく時針になろうと準備を始めていることだった。
「 第一! 私は先輩の、最~~高に大切で、唯一無二の完璧な、そして…… 」
「 後輩、だろ? 」
「 その通り! 」
図々しいにも程がある。
最近、距離の近い顔を見せていたのが仇となったようだ。
いつの間にか、そんな反応を楽しんでいるようにさえ見えたから。
「 そして第二は! 」
「 私が、先輩の作ったデタラメな部活の、唯一の部員だからです! 」
たった一言。
感情を逆なでする、小さな名詞。
「 授業開始まで、およそ3分だ 」
「 それからキャロル 」
「 あのデタラメな美術部をやろうって言い出したのは、確かお前の頼みだったはずだけど 」
(コホン!)
「 そんなの、今は重要じゃないですよ! 」
「 ……とにかく、早く着けてください!! 」
滲んでいく。
スケッチされた絵の上、たっぷりと水を含んだ筆から落ちる色のように。
顔を色褪せさせた線の集合体の向こう。
最も原初的な色が、その下で広がっていく。
「 結局、何の理由もないってことだな 」
「 …… 」
赤く染まる紅潮の理由が気になるときは、
躊躇わずに愛を告白した。
真心を伝えることこそが、
顔に線を引く資格を得ることだと信じていたから。
「 本当に、やってくれないんですか……? 」
不貞腐れて尖らせた口元。
きっと、こうして拒絶されたと思えば、
スノウも同じような表情をしたに違いない。
(スッ……)
「 ……!? 」
そっと伸ばした手で、
あいつの右の手首を掴んだ。
「 じゃあ、僕も 」
もう片方の手で、彼女のリ본(ピン)を握った。
少女の戸惑いは、
不自然に開かれる指先から伝わってきた。
まるで機械の関節のように、ギシギシと。
「 今回だけだぞ 」
「 何の理由もなく、お前の我儘を聞いてやるのは 」
二人の間には、ただ一つの机があるだけ。
あまりにも狭いその空間では、
ヘアピンを留めるために近づく彼を止めることはできなかった。
「 キャロル 」
彼女は焦点を失った瞳のせいで、
顔がぼやけ始め、
高い位置からの吐息が、
次第に近くなり始めたとき。
(パチッ!)
「 受賞、おめでとう 」
ようやく、線を引くことができた。
感情が消え去った後に残った場所。
冷めてしまった赤色だけが残り、
ただの痕跡として片付けるしかなかったけれど。
「 ……ありがとうございます、先輩…… 」
確かにそれは、
紅潮ではなかった。
「 本当に…… 」
その眼差しは、
決して、
赤いリボンではなかったんだ。
- 不格好に留められたフューシャのリボン -
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[ 耳を劈く観衆の拍手と歓声の中で ]
立派な画家になったキャロル・ディアナの物語は終わった。
だから、もう、
物語の脇役として、顔を上げて生きるのを諦めた。
誰もが愛する青い空は、
色を見ることができない僕にとっては、ただの
巨大な穴にしか見えなかったことに気づいてしまったから。
[ 続いて、奨励賞を授与致します ]
見苦しい言い訳は必要ない。
自分自身の証明を絵に託したのは、
純粋に、そしてひたすら、自分のためだったのだから。
全色盲という難解な病名も、ただの虚像に過ぎない。
[ 受賞者は…おめでとうございます! キャロル・ディアナ様! ]
あの日、心地よい風が吹いていた。
平日の午前、静かな公園に座って、
空と木が一緒に映る絵を描いた。
[ ……ありがとうございます ]
パレットの絵の具が、なんて早く固まることか。
屋外で絵を描いたのはあの時が初めてだったから、
今でも記憶に鮮明に残っている。
「 あいつ…… 」
群れをなす鳥たちの移動と、
落ち葉を覆う芝生の上で
転がりながら体を乾かしている三毛猫。
ささやかに過ぎ去る現実を、
一つ残らず描き留めた。
「 また、『あの時』みたいな顔をしてる 」
これから、これが僕の最後の絵になる。
筆は難しい。
水の調節は、一筋縄ではいかない。
[ …… ]
いつの間にか日は沈み、
繋ぎ止めていた『現在』の最後の風景たちは、
月を避けて足早に逃げ去ってしまった。
[ 皆様、今一度盛大な拍手をお願い致します! ]
死人に口なし。
ならば、
言葉を発しない方法もまた、一つしかないね。
(わあぁーー パチパチパチーー)
考えは意外なほど簡単にまとまった。
決心を固めると、すべてが安らかになった。
誰もいない夜の学校。
普段なら開いているはずのない屋上は、
近づく運動会の備品保管を理由に開放されていた。
「 ふぅ…… 」
大丈夫。
震えるのは当然のことだ。
平然を装っている彼らも、
本当はみんな同じ気持ちだったはずだ。
(ギュッ……)
ひんやりと吹く黒い風に
身を縮める代わりに、手に持った絵を握りしめた。
強く、くしゃくしゃになって、完璧には広がりもしないほどに。
「 あ。 」
(一歩。)
「 最後に、聞きたいことができた 」
「 誰でもいい、聞いているなら代わりに答えてくれないか? 」
(二歩。)
「 今、僕がここから落ちたら 」
(そして、最後の一歩。)
「 明日の朝、たくさんの人が集まって見物して…… 」
「 真っ白な布が、濃い赤に覆われるんだろうな 」
[ 死の上に足を乗せ、あの日の朝のように顔を上げた ]
「 そうか…… 」
「 それなら、さ…… 」
やっぱり、しんどいな。
「 この絵は、一体どこへ行くんだろう 」
流れる涙に詰まり、くぐもった言葉を繋ぐのは。
「 …… 」
(ハラリ……)
激しい風よ。
僕を慰めてくれた、
過ぎ去りし日の風よ。
これまで吹くのに苦労したね。
(ヒュォォーーー!!!)
もう、
僕が行くよ。
今度は、
僕が君に吹く番だ。
「 ああーー、本当に馬鹿みたいじゃないか―― 」
なら、誰かは
吹き飛ばされた僕に巻き込まれて、
この絵を見ることになるんだろう。
「 『青い色の野原』だなんて…… 」
故意に落とした赤い絵の具が、
「 本当に…… 」
僕の代わりにね。
「 馬鹿みたいだ…… 」
(ドォォォン!!!)
- 過去の話:間違った色の絵 -
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[ 疲れ果てて過ぎ去った風を振り返る場所 ]
「 エド!! 」
驚いた目。
二重の意味があるというのがさらに驚きだったが、
スノウの二倍に大きく見開かれた瞳には、
喜びの感情が大半を占めているように見えた。
「 どうしたの? 今日はすごく早く来たね?! 」
「 ちょっと昼寝だけして行こうと思って 」
「ちょっと」という言葉が何だというのか。
ただの「ちょっと」でも、十分なものがあるんだ。
「 もぉー! また前みたいに、夜遅くに来るんでしょ! 」
「 ごめん。でも、今日はすごく疲れてて、どうしようもなかったんだ 」
思考の中でベッドに横たわった。
「 ふん! 今回だけは多めに見てあげることにするよ! 」
確かに僕が考えたのは小さな一人用ベッドだったはずなのに……
(へへっ)
いつの間にかクイーンサイズになったベッドの僕の隣で、
スノウが腕にしがみつきながら横たわっていた。
「 スノウ 」
「 #FF00FFの色を作ってくれ 」
目を合わせながら頼んだ。
「 急に!? 」
「 ああ、急に 」
「 ……ただ、見たくなったんだ 」
少し不思議そうではあったけれど、
「 いいよ! そんなの簡単なことだよ! エド博士! 」
すぐにベッドから起き上がって胡座をかき、
目を閉じて両手を合わせ、
高度に集中し始めた。
(ううぅ……!!)
「 ジャジャーン! 」
そうして、フューシャの瞳が開かれた。
「 どう? エド! 私に似合ってる? 」
「 …… 」
僕が色を作ってくれと頼んだ理由を言ったら、
スノウはきっとひどく拗ねてしまうだろうな。
「 ああ 」
これは秘密だよ、スノウ。
僕が次に言おうとしていた言葉は、本当は、
「 綺麗だ 」
[ よかった ]
だったんだ。
- 似合ってるよ。だから、もう心配しないで -
ハートの色




