6月第2週 政治・経済重大ニュースベスト5【バラマキ 外出禁止令 日本製鉄 ホルムズ海峡 年金制度】
2025年6月第2週の個人的な政治ニュースを5つチョイスしましたのでどうぞご覧ください。
第5位 『LA 中心部に外出禁止令も 220人余が逮捕 事態収束せず』
NHK6月12日の記事より
『アメリカ西部ロサンゼルスでは、移民の一斉摘発への抗議デモに乗じた混乱を防ぐため、10日夜、市の中心部に外出禁止令が出されましたが、朝までに220人余りが逮捕されるなど、事態は収束していません。
アメリカ西部ロサンゼルスでは、滞在資格のない移民の一斉摘発に抗議するデモに乗じて一部が暴徒化したことから、現地10日の午後8時から翌朝6時までの夜間、市の中心部のダウンタウン地区を対象に外出禁止令が出されました。
初日の夜、現地では、多くの警察車両が展開するなか、トランプ政権に対し抗議の声をあげながら行進する集団も見られ、ロサンゼルス市警は11日、解散に応じなかったなどとして朝までに220人余りを逮捕したと発表するなど、事態は収束していません。
ロサンゼルスのバス市長は11日、周辺の自治体の市長らとともに会見を開き、トランプ大統領が大統領権限で州兵を派遣したことについて「連邦政府は州知事などからどの程度権限を奪えるか試している」と非難しました。
また州兵の一部は移民税関捜査局による摘発にも同行していて、カリフォルニア州のニューサム知事は11日、SNSに、本来山火事に対応すべき州兵が足りなくなっていると投稿するなど、政権への批判を繰り返しています。
これに対し、ホワイトハウスのレビット報道官は11日の会見で「トランプ政権は、大統領がアメリカ国民に約束した大規模な強制送還の取り組みを継続する」と述べて、今後も摘発を続けるとしていて、政治的な対立も深まっています。』
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カルフォルニア州で6月6日に始まったICE(移民・関税執行局)による取り締まりで数十人が職場などで拘束されたことに対する抗議活動が暴徒化して破壊行為を繰り返したために(アップルストアを破壊、自動運転タクシーに火をつけるなど)、州兵投入まで至りました。
これはちょっと双方に言いたいことがありまして、
まず不法移民側を保護する側は抗議をするのは権利ではありますが、破壊行為をすることは表現の自由の範疇の外であり、「不法移民は犯罪をする」という考えが広まるためにむしろ逆効果でしょう。
ただ、アメリカ政府側もゴム弾とは言え「国民に銃を向ける」という事態で言わば「恐喝」しており、せめて水を放水するぐらいにとどめておかないと「住民・移民を迫害している」という悪いイメージをより強めることになってしまうと思います。
エスカレーションし過ぎてしまうと、お互いに冷静な交渉ポイントを見失ってしまうのかなと思いました。
第4位 『自民党が1人2万の現金給付を参院選公約に、子どもには4万…首相「バラマキではない」』
読売新聞6月14日の記事より、
『石破首相(自民党総裁)は13日、物価高対策として、国民1人2万円の現金給付を参院選公約に盛り込むことを検討するよう自民幹部に指示した。子どもと住民税非課税世帯の大人には2万円を上乗せし、計4万円とする。首相官邸で記者団に明らかにした。
給付に必要な予算規模に関しては、「粗々の試算では3兆円台半ば」と語った。財源としては税収の上振れ分が想定されているが、首相は「赤字国債には依存しない。財政を決して悪化させないことを優先して判断する」と述べるにとどめた。野党各党が掲げる消費税減税にも言及し、「高額所得の人に手厚くなり、適切ではない」と語った。
自民は1人4万円を給付する案を求めていたが、税収の上振れ分で相当の財源を確保するのは困難と財務省が主張し、首相ら党執行部による13日の協議で、1人2万円を基準とすることで落ち着いた。』
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詳しくはこちらに書きましたが、https://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/2757956/
かつて国民民主党が「所得税の壁を178万円まで上げる」と提案した際に自民党が却下した「税収の上振れ分」を自身の給付の際には財源に出来るというふざけたロジックを使っています。
本来であれば1回こっきりの給付よりも恒久的な減税のほうが望まれます。(日本の場合は特に現金給付は貯金されがち)
それも物価高による税収の上振れがここ3年では大きな要因なのですから、所得税の壁引き上げに充てるというのは妥当なラインだと僕は思っています。
しかし、それを拒否して何に財源を使うのか自分たちで思いのままに決められるという「驕り」みたいなものを感じます。
給付であれば「国民を救う」と言う旗印を掲げながらお仲間にもお金を配れる一石二鳥の作戦になるのでとても有効なのでしょうね――国民にとっては悪い状況ですけど。
こういったことをメディアはもっと指摘してくれよと心の底から思います。
第3位 『日鉄のUSスチール完全子会社化をトランプ氏承認 米政府には黄金株』
朝日新聞6月14日の記事より
『日本製鉄による米同業USスチールの買収計画で、日鉄は14日、両社のパートナーシップ(提携)についてトランプ米大統領の承認を取り付けたと発表した。日鉄によると、USスチールの経営の重要事項について拒否権がある黄金株(拒否権付き種類株式)を米政府に発行する一方、USスチールの普通株は日鉄が100%取得し、完全子会社とする。
日鉄は18日までに取引を完了させるつもりだ。計画の発表からおよそ1年半。株式の取得だけで約140億ドル(約2兆円)を費やす大型再編は、新旧の米大統領がともに反対に回る逆風をはねのけ、成立にこぎ着ける見通しとなった。
日鉄の発表に先立ち、トランプ氏は13日、今年1月に当時のバイデン大統領が出した買収禁止命令を変更。「国家安全保障上の脅威は条件を満たせば十分に軽減される」とし、日鉄とUSスチールが米政府との間で国家安全保障協定(NSA)を結ぶことを条件に、買収を容認できるようにした。日鉄は、バイデン氏の禁止命令を不服として米政府を訴えていた訴訟を近く取り下げる。
安保協定はすでに締結済みで、日鉄によると黄金株を含むUSスチールの企業統治や、米国での生産についての約束が盛り込まれた。USスチールの生産設備などへの投資額は2028年までに110億ドル(約1.6兆円)。その後の分も含めると140億ドルを投じる計画だ。
粗鋼生産量でかつて世界首位だったUSスチールは米国の象徴的企業の一つで、トランプ氏は「米国が支配する」と主張してきた。強い権限のある黄金株を握ることで、重要企業を外資系に売り渡したとの印象を薄める狙いが米政権にはあるとみられる。
一方の日鉄は、当初からめざしていた完全子会社化が認められたことで、経営の自由度と巨額投資に見合う採算性を確保できると踏んでいる。先端技術の提供や、生産能力の増強につながる投資を進めていく考え。
日鉄とUSスチールは「トランプ大統領の果断なリーダーシップと歴史的なパートナーシップへの力強い支援に感謝する」とのコメントを発表した。
日鉄は23年12月、経営不振で売りに出ていたUSスチールの買収計画を発表した。これに全米鉄鋼労働組合(USW)が反発。昨秋の大統領選を見据えてバイデン、トランプ両氏もそろって反対し、計画は宙に浮いた。トランプ氏が大統領就任後の今年4月、買収計画の再審査を政府機関に指示し、買収承認に向けた流れが強まっていた。』
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この買収がアメリカにとって「国家安全保障上の問題」と言われていた時点での解説はこちらです。
https://ncode.syosetu.com/n6948jm/
USスチール側としては経営状況の悪化から日本製鉄に助けてもらわなくてはいけない状況でしたが、日本製鉄にもかつては中国と繋がりが強かった部分もあり、アメリカ政府としても「保障」が欲しい所でした。
しかし、日本製鉄側としても100%株式を所有できなければ何の意味も無く投資することは出来ないと譲れない一線でした。
そこで出てきたのが「黄金株」というものです。大幅なリストラや工場閉鎖などの重大な株主決議が必要な事案に関しては即座に「拒否権」を発動するというものです。
報道が二転三転したために取締役がアメリカ人が過半数を占めることや投資額が増減するかについての詳細は分かりませんが、双方とも絶対譲れないところは守り切ったという印象でした。
今後もこうしたアメリカ企業の買収については「黄金株方式」を活用して自国の企業を守っていくのではないかと思います(日本もそう言ったことを考えるべきだが肝心の日本政府内部に海外の影響力を大きく受けた人たちがいる……)。
第2位 『年金制度改革法 自公立賛成で成立 年収106万円の壁解消し厚生年金適用拡大 氷河期世代など下支えへ基礎年金底上げ策も盛り込み』
FNNプライムオンライン6月13日の記事より、
『年金制度改革法が13日の参院本会議で、自民党・公明党・立憲民主党などの賛成多数で可決・成立した。
法案には、年収106万円の壁の撤廃などによる厚生年金の適用拡大、働く高齢者の年金が減額される在職老齢年金制度の見直し、高所得者の厚生年金保険料の上限引き上げなどが盛り込まれている。
さらに政府案から外されていた基礎年金の底上げ措置が、衆議院の審議の段階で復活し付則に盛り込まれた。
就職氷河期世代などが低年金や生活保護に陥るのを防ぐための措置で、4年後に行われる予定の次回の年金財政検証の際に基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合、厚生年金の積立金を活用して将来にわたって基礎年金の底上げを図る。
一方で、この措置を発動する場合に基礎年金底上げ分の半額を賄う国庫負担分については、約30年後に年間2兆円程度が必要と試算されているが、日本維新の会や国民民主党はその財源が示されていないことについて批判し、採決で反対した。』
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人口増加時代に作られ、そうした時代だからこそ成立した全世代で支える年金制度。
今の人口減少社会では支給が減るか増税されるかの2択の状況です。
今回は厚生年金基金に余裕があるから国民年金の財源にしようというだけでなく、将来的にはそれでも20年後には足りなくなる年2兆円以上の部分をどうするのか? と言う重要な議論は全くされないままこの法案は成立しました(国債で賄い、国民負担なしなら問題無いですが現実は増税でしょう)。
これこそ財源論者の言う「将来世代へのツケの先送り」という最悪の状況であり、これを指摘できないメディアも腐っているか節穴しか付いていない状態だと言えます。
106万円の壁の廃止から子育て世代への実質的な手取り減、若しくは働く時間を増やすことによって子育て時間が減ることにもなり、良いところは何もありません。
年金制度が現役世代を苦しめる要因でありながら受け取る側も少ない状況になるぐらいなら廃止してしまった方がマシだというのが僕の考えです。
第1位 『イラン、米英仏に「妨害なら中東の基地を標的」と警告 地元メディア』
朝日新聞6月14日の記事より、
『イスラエルが13日にイラン国内の核施設などを空爆したことへの報復として、イランは同日夜(日本時間14日未明)、イスラエルに対し、弾道ミサイルなどによる大規模な攻撃を開始した。攻撃は14日も続き、イスラエルメディアによると、少なくとも3人が死亡、70人が負傷した。イスラエルも攻勢を強めており、紛争は激化している。
イランメディアは、数百発の弾道ミサイルで波状攻撃を実施したと報じている。ロイター通信などによると、イスラエル軍は米軍の支援を受けて迎撃を行ったが、一部が防空網をかいくぐって商都テルアビブなどに着弾。中部リション・レジオンでは住宅地に直撃し、60代の女性と40代の男性が死亡し、少なくとも19人が負傷した。テルアビブ近郊ラマトガンでも60代の女性が死亡した。
攻撃に先立ち、イラン最高指導者ハメネイ師はテレビ演説で「シオニスト体制を崩壊させる」と語り、報復攻撃を本格化させる考えを示していた。ハメネイ師直轄の精鋭軍事組織・イラン革命防衛隊は14日、軍事基地など150カ所以上を標的にしたと明らかにした。
イランのミサイル攻撃を受け、イスラエルのカッツ国防相は13日、イランが「レッドライン(越えてはならない一線)を越えた」と述べ、攻撃を強める考えを示した。イスラエルは住宅地に被害が出れば、イランの石油関連施設などを標的にするとしており、今後、軍事施設から国家インフラへと標的を拡大する可能性がある。
イラン側も、自国のエネルギー施設などが攻撃されれば、同様の報復に踏み切る構えを見せている。
イランメディアは14日、イランが米英仏の3カ国に対し、報復攻撃を妨害すれば、中東地域に展開する各国の軍事基地やペルシャ湾などを航行する船舶を「標的にする」と警告したと伝えた。
一方、イランでも空爆が続いている。イスラエル軍は13日、中部イスファハンの核施設などを攻撃したと発表し、14日には首都テヘランの防空システムなどに被害を与えたと明らかにした。軍は「今後も戦略的な拠点への攻撃を続ける」としている。イランメディアは13日にテヘランの住宅街で起きた攻撃により、子供20人を含む60人が死亡したと報じた。
中東で緊張が一気に高まる中、国際社会では双方に「自制」を求める声が強まっている。これに対し、イランのアラグチ外相は13日、英国のラミー外相との電話協議で、イスラエルの攻撃に直面する中で自制を求められるのは「不当だ」と反発を示した。
イランの核開発を巡っては、15日に仲介国オマーンでイランと米国の交渉が予定されている。米メディアによると、トランプ米大統領は13日、「彼ら(イラン)は今真剣に交渉するかもしれない」と述べ、空爆が交渉を進展させることに期待を示した。
ただ、イラン外務省報道官は14日、地元メディアに対し、イスラエルの攻撃について「米国の協力なしにできるとは想像できない」と語り、協議に参加するかは「不透明だ」と述べた。』
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24年4月にもイランとイスラエルのミサイルを打ち合う事態まで発展しましたが、
あの当時は人のいない地域に打ち合うという「国内過激派を鎮めるため」にやったことに過ぎませんでした。
しかし今回はイスラエルはイランの油田などへ、イランはイスラエルの国防総省などへという重要拠点に双方ミサイルを撃ち込み死者も現時点で数十人規模で出ています。
更に、イランが欧米との「核合意」に向けた交渉の打ち切りなどこれまでにない動きをしていることから過激で不可逆的なレベルまで戦闘がエスカレーションする可能性がある領域まで来ていると思います。
日本政府のイスラエルとイランへの対応としては「双方批難」と言う中立の立場であるためにこの点は問題なく感じます。
しかし、問題はイランが通行権を事実上握っているホルムズ海峡を日本の石油が80%ほど通過しているという事です(世界の石油生産量の20%~30%ほどがホルムズ海峡を通過しているようです)。
現在は約240日分の石油の国内備蓄は存在しており、パイプラインなどを使えばホルムズ海峡を使わずに迂回することも可能ではあるようですが、代替えの輸入先にしても追加で非常に費用が掛かることが予想されます。
そうなれば更なるガソリン価格の上昇やそれに伴うコストプッシュインフレの可能性は否めないと思います。
エネルギー安全保障のためにも日本近海の海洋資源の開発をするべきであり、中国に忖度して何もしないのは問題外だと思います。
いかがでしたでしょうか? 今週は「マグマの一部が流れ出した」ような印象がありました。
今後の世界の混乱が早期に終結し、なるべく日本に損害が少ない形で切り抜けてくれれば……と願うばかりです。