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8. どうやら僕は能力猫でした その①


  この世界での生活を受け入れてから、体感四ヶ月経たずの頃のこと。



 それに気がついたのは僕の体を観察している途中、ふとある単語を頭に浮かべた時のことだった。こう、頭の中で唱えれば何かわからないことがわかるような、そんな気がしたというこの世界の強制力とでもいえばいいのか。それがこの世界で当たり前の本能というべきなのだろうか。



『ステータス』


 心の中でそう唱えると、色々な情報が頭の中に流れ込んできた。



 いきなりの事にまるで背後のきゅうりにビックリした猫のように驚き飛び跳ねた。お母さんや弟妹達からはいきなりなんぞや!?という反応を受けたけど近くに飛んでた蚊を追いかけて誤魔化した。


 一体なんなんだろうこれは。ゲームの世界でもあるまい、ステータスなんて現実味が薄い。それとも僕は死んだと思ってるだけで、もしかすると昏睡状態で変な夢でも見てるのだろうか。そんな気分にもなるけど『ステータス』以外の感覚は敏感すぎるほどに現実を打ち付けてくる。


 その他ここがゲーム的な世界なのであればと思い『セーブ』『ロード』『コンテニュー』『ホーム』『サウンド』『フレームレート』『セーフサーチオフ』といろいろ唱えてみたけど何も起きず、影響を与えたのは『ステータス』だけだった。


 あまりの意味のわからない現象に心臓の鼓動が早まっていた。一旦深呼吸をして心を落ち着くんだ。落ち着け。そう、素数だ。こういう時は素数を数えるんだ。

 

 ………い……に?……あれ? えーっと? えーー、……1って、素数に含めるんだっけ?確か含めなかったような気がするんだけども。なんか1を含めたら素数って何も成り立たないのでは?それに分解した時 1 × 1 × 1 × 1 × みたいな表し方ができるわけで?ん?出来たところで問題あるんだっけ?…あれ、僕が頭悪いだけ?ダメだ禄に勉強してこなかったからわからない!っていうか!猫には素数がなんだ確かめる術がない!


 ※「1」は素数に含みません


 まぁいいや。ものすごいモヤモヤするけど結果的に落ち着いたし。

 僕はお母さんに寄りかかりゆっくりと目を閉じじっくりと確かめる。



 ――――――――――

 種別:魔物種〈モンスター〉

 種族:化猫〈レッサーワーキャット〉

 能力:上感覚

 技能:『変化』『空蹴り』 『隠密』

 ――――――――――



 『……なる、ほどね?はいはいはいはい……うん! よくわかんない!!』



 それが第一の感想だ。我ながら知能が低い!

 ひとまず今ある情報を受け止めよう。まずはそれからだ。

 


 まず『種別』からだけど、どうやら僕は魔物種〈モンスター〉に分類されるらしい。元々普通の猫じゃないんだろうなぁとは思ってはいたけどまさか魔物とは。こんなに、可愛い猫達をモンスター判定だなんてね。


 この世界は見る目がないんじゃないかな?

 

 いやしかしこれはおふざけ抜きでこれは深刻な問題だ。人間間でも種族の違いの問題はシビアだっていうのに魔物なんてこんな生きづらいものはないだろう。

 もしこの世界がゲームのようにこんなことが許されてるのだとしたら……

 


 『素材と経験値が足りないから周回だぁぁぁ!』

 『最強装備で安定周回! 超火力殲滅気持ちぃぃ!!』

 『タイムが縮まらない!! 遅延行動いい加減にしろ!』

 『心臓だけ! 心臓だけ落としてくれればいいから!!』

 『オメェ強ぇんか!? よっしゃ腕試しすっぞ!!』



 怖すぎるッ!!!

 元の世界のゲームの中での話だったらそっち側だったからなんとも言えないけど!! こんなことが横行する世界だったら絶望的だ。ま、まぁこんな可愛い種族が狙われる世界じゃないと思いたいものだけど、今後の生き方慎重にならないとスローライフどころではなくなってしまうかもしれない。これは要注意だね。

 


 それにしても化猫〈レッサーワーキャット〉という種族。おそらく技能の『変化』というのがその所以なのかな?そういうのは猫というより狸のイメージが強いけど、実際ステータスにあるんだからそういう種族だって受け入れるしかないか。

 

 でもこの技能はかなりおいしい。猫として転生した僕だけど、この変化をうまく使えれば人間に紛れることだってできるってことだし。

 


 そうなれば! つまりはッ!!

 猫でありながらッッ!!!

 猫を!! 撫で撫でできると言うことッッッ!!!!


 僕にとって強大な力とかチートギフトよりも重要な力だ。後でやり方を探って見みよ。

 


 後は『空蹴り』と『隠密』だけど。

 隠密についてはまぁ野生だし特段気にすることもないけど、空蹴りについては思い当たる節はあった。

 それはお父さんが帰ってくる時に見せる、あの異常なまでの跳躍力だ。今までは大人になれば登れるだけの体力や筋肉がつくのかと思っていたけど、これで何となく合点がいった。



 それで最後は能力の「上感覚」だね。その名の通り感覚が鋭くなるみたいなものっぽいし、これも何となく思い当たる節もあるんだけど………

 


 『そもそも「能力」と『技能』の違いって何? 『変化』だって見方を変えれば立派な能力だろうに。でもステータスっていう何かしらの現象?で区別されてるんだからそれなりに違いがあるのかな?』

 


 んー、しかしこの『ステータス』とかいうの、名称しか教えてくれない不親切具合はいかがなものだろうか。

 どんな技能または能力なのか説明がなきゃ使えないって。何この操作方法も効果も書かれてない大雑把な説明書。それともそれはレベル上がったわかるとかそんなこと?いや少なくともこのステータスには『Lv』『HP』『MP』『SP』『スタミナ』といったところまでは表示されてないから流石にないんだと思うんだけど。


 まぁなんだかんだ考えては見たけど、僕がまずすべきことは化猫らしく化ける技能を習得することかな?その後で、地上に降りた時必須になるであろう空蹴り。頭の中にリストとして思い浮かんできたんだから使えないわけがないと信じたい。


 僕は再び目を開ける。ふとお母さんの顔を見上げると不思議そうな顔で僕を覗き込んでいた。


 そういえばお母さんも能力とか技能とか使えるのかな?変化なら種族としての技能っぽいし、お母さんにやり方を聞くのが一番早そう。

 そう思い僕はお母さんへ変化について教わろうと視線を送る。



 ………………………………



『そもそも猫同士の細かいコミュニケーションの取り方もわかってないのに教わるも何もないよね。バカなのかな。技能とかそんな背伸びする以前に、僕が習得すべきはコミュニケーション方法なのでは?』



 そんな自らの頭の悪さには呆れてしまうところではあるけど、まぁそう焦ることはない。そもそも僕はまだ数ヶ月ぐらいしか生きていない猫なんだ。人間だって言葉を覚えたりするのも一年はかかる。変化は魅力的だけど、今でも十分猫達を愛でられているんだ。人間に化けて猫を撫で撫でするなどと、そのような可愛がりチートは望みすぎなところもあるしね。



『でも、もしお母さんや弟妹達と話せたら楽しいだろうなぁ。猫とずっと遊べるのはいいんだけど、それ以外に娯楽がないのも悩ましいんだよねぇ。ここ最近は独り言ばっかり。あーあ。感覚が優れる能力があるっていうならなんかうまいこと作用してお話しできるようにならないかなー』



 僕はお母さんに意識を集中してみる。特にこれと言って何かが変わることもない。もしお母さんに何か伝えられるとしたら何を伝えようかな。定番といえばママとかご飯とかではあるんだけど、僕がお母さんに伝えたいこと、伝えたかったことと言ったら――



『お母さん、いつもありがとう』



 その意思はまるで風に乗りお母さんへと届いたような気がした。


 いや、気がしたんじゃない。



 『えっ、えぇぇぇぇぇ!? 今なんてっ……も、もう!? 早ッ……ママとか、パパとか、ご飯とかじゃなくて「お母さんありがとう」なの…!? ……えっ、この子ったら……愛おしい……』


 『ッんんんんなんかできたし聞こえる!!?』



 お母さんは僕の意思にわかりやすく狼狽えていた。

 まさか本当に伝わるとは思わなかったし、何ならお母さんからの言葉も聞こえていた。厳密には、言葉ではない意思が頭の中で言語として変換されて『こいつ直接脳内に!?』みたいな感覚に近い。

 

 これまでは『鳴き声』や『感情のニオイ』でおおまかに意思を伝えていたんだけど、それに加えて詳細なイメージが必要だったようだ。勿論ただ思い浮かべるんじゃなくて、風に乗せて直接相手の頭に送るような感覚。逆にその意思を受け取るためには、相手にしっかり集中して意識の波長?みたいなのを整えるとしっかりと聞こえるようになるようだ。これはもしかして能力『上感覚』が上手く働いたおかげなんだろうか?



 『とかそんなことはどうでもよくって!!』



 思わぬ収穫に僕も戸惑うところではあるんだけど、話せるようにはなったのならば! 変化のやり方を教わることが…………いやダメだ。そもそも人間を知るはずのない子猫が人間に化けたい、なんて言うのはあまりにも不自然だ。猫を撫で撫でできる力は喉から猫の手が出るほど欲しくはあるんだけど、それ以上に今の自分の居場所を大切にしたい気持ちはある。


 でも、いつも落ち着いているお母さんもこういう反応をすることに少し驚いた。やっぱり猫でも子猫は可愛いと思うものなんだね。自分に向けられるのはものすごい恥ずかしいけど。

 ただ赤ちゃんが喋る言葉にしてはびっくりするチョイスをしてしまったかもしれない。よくよく考えるともはや天上天下、唯我独尊の逸話の一歩手前だ。



 しかしこれでまずは第一歩といったところ。一先ずは大人達と話せるようになったことを存分に楽しむことにしよう。



最後までお読みいただきありがとうございます!


もし本作について「先が気になる!」「なんか面白いかも?」等思ってくださいましたら、『ブクマ』や下あたりにある『⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎』にて評価をいただけましたら嬉しいです!

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