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30. 予兆『異変と探り』 その②


 刻は丑三つ。

 夜も老けた頃、とある空き家には小さな明かりが灯っていた。そこには三人の影。


 白銀の長髪の女性と、茶髪の癖っ毛気味の男性、そして黒髪の男性が机に広げた地図を囲い、とある計画について話を進めていた。



 そのかたわらでは、女性と同じ白銀の長髪の少女が毛布に包まりスヤスヤと眠っている。


 

「本当ですかそれは!?」



 白銀の長髪の女性がそう声を上げた。

 その後、しまったと言う様なそぶりで口を押さえる。


 

「お静かに。情報源は確かです。あの貿易路付近にたむろしていたB級冒険者と兵達が今、西方の森の地下迷宮ダンジョンへと出向いているとのこと。まだ残っている冒険者も居ますが、近い内に補給のためにこの街まで戻ってくるはずです」


 

 黒髪の男は彼女を軽くたしなめ、淡々と現状の報告をする。


 

「罠の可能性はないだろうか?どうして今更冒険者達が地下迷宮ダンジョンに潜る必要がある?この経路をフリーにさせて、私達を誘き寄せているようにも見えるなくはないが……」


 

 そう呟いて茶髪の男性は顎に手を当てて考え込んだ。

 しかしその言葉に対して、黒髪の彼は確信めいた表情で首を振る。


 

「その心配もほぼないでしょう。何より国外への逃亡の経路が一つ増えたに過ぎません。経路なら他にいくらでもあります。それに今だからこそ、いいんですよ。知り合いの冒険者の話によると、B級の魔物が森から出てきているのは地下迷宮ダンジョンが要因の可能性が非常に高いとのこと。その地下迷宮ダンジョンも推定でA級、場合によってはS級すらもあり得ると聞きます。そんな地下迷宮ダンジョンが地上に影響を及ぼしているとなれば、最早我々を追っているどころじゃないでしょう?それに、今であればB級の魔物が彷徨うろつくここいらから逃げたいと思うものも少なくない」

 

「木を隠すなら森の中、か……分かった。ひとまず計画に光が見えたのは行幸だ。では計画通り、残りの冒険者が街へと戻るその翌朝に出発しよう」


「分かりました。おそらく、そう遠くない内に機会は来ると思います。準備だけは今の内に整えておいてくださいね」


「わかった。ティナには朝、私から説明しよう」


 

 茶髪の男性は腰を下ろし、床で眠っている少女の頭を優しく撫でる。そして音を立てない様にゆっくりと腰を上げて、今度は白銀の髪の女性へと目を向けた。



 彼女は今の話を聞いても、どこか不安げな表情を浮かべていた。茶髪の男性は、彼女の肩にそっと手を置いた。



「気掛かりか?あの瑠璃色髪の女性の話が」



 彼の言う『瑠璃色髪の女性』。

 それは城塞国ウォーリルへの亡命計画の首謀者である。


 突如として現れ、彼女達に逃亡に最適な経路から帝都からの刺客の動きまで、その全てを示してみせた。



 更に、真っ向から武力で攻めてきた刺客に対しては、その圧倒的な力で鎮圧しても見せた。



 この四人とも一切の面識などもっていない。

 実力としては相応にあるのに対し、冒険者として名前がしれているわけでもない。


 亡命に協力的なこと以外、その全てが謎に包まれていた。



 彼女から示された計画は全て完璧だった。

 彼らも初めは半信半疑ではあったものの、これまでの道筋その全てが彼女の言う通りに進んでいること。今のこの状況すらも計画の内であることに、不気味さすら覚え始めていた。



 更に言えば、その完璧な計画の行き着く先が決して明るいものではなく、それ以外には道は残されていないとことは既に示されていたのだ。



「…………ここまで来れたのは、間違いなく彼女の計画おかげです。私たちだけでは決してここまで逃げることもできなかったでしょう。そして彼女の言うことが本当ならば……」


 

 彼女はその先の言葉に詰まった。

 その体は小刻みに震えている。



 茶髪の男性は彼女を静かに、優しく後ろから抱きしめた。


 

「彼女が本当に味方なのかどうかは、正直私も分からない。しかし、ティナの命を何度も救ってくれたのは確かな事実だ。もう道がこれしか残されていないというのなら、ティナが助かる道がこれしかないというなら、私達はこの道を選択する他ない…………怖がることは決して恥じゃないよ。もし君が望むのなら私は――」

「いえ、貴方にだけ背負わせられないわ。それに、私がここに残る事で、彼女の計画にどう影響してしまうのか……これ以上ティナを危ない目にはあわせられないわ」



 彼女は声を振るわせながらも、その瞳はしっかりと未来を見据えていた。茶髪の男性も彼女のその覚悟に、抱きしめる腕に力が入っていく。



「…………そうか。ありがとう。愛してるよ」

「私もよ……貴方も、ごめんなさいね。こんなことに巻き込んでしまって。貴方には感謝してもしきれないわ」



 彼女は静かにしていた黒髪の男性へと目を向けた。

 黒髪の男性は二人の様子を静かに見守っていた。


 黒髪の彼は、彼女からの感謝の意に少し恥ずかしまじりの笑顔を浮かべる。


 

「いや、私はこの国のやり方が気に食わなかっただけですよ。それに、エイミスさんには色々とお世話になりましたからね。恩返しぐらいさせてください」


「ありがとう。でも、もし命に危険があったら逃げてしまってもいいのだからね。それだけは頭に置いておいてね」


「……わかりました。ですが、ここまで来たなら最後までつき合わせていただきます。瑠璃色髪の女の話がなんだって言うんですか。お三方は城塞国ウォーリルでのこれからの生活だけを考えてればいいんですよ」



 黒髪の男性は少し不満げな表情をうかべながらも、自信に満ちた声色で言い放った。

 二人はそんな彼の様子にクスリと笑って返した。



「本当に、心強いよ。君がいてくれてよかった。それじゃあ今日はもうお開きとしよう。色々と、準備は進めないといけないからね」

 


 そして彼らは灯していた明かりを、ふっと消し去ったのだった。

 

最後までお読みいただきありがとうございます!


もし本作について「先が気になる!」「なんか面白いかも?」等思ってくださいましたら、『ブクマ』や下あたりにある『⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎』にて評価をいただけましたら嬉しいです!

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