23. 形成『魔石と地下迷宮』
魔石と地下迷宮〈ダンジョン〉
この世界において、この二つは切っても切れない関係性を持っている。
地中奥深くに蓄積している魔素が、長い年月をかけ結晶化してできた鉱物を俗に『魔石』と呼ぶ。それは純粋な魔素の塊であり、例え一カラット程度の大きさであっても、熟練の魔法使い十人の総合魔力量に相当する程のエネルギーを持つと言われている。
魔石はその強大なエネルギーによって、魔素を蓄えるに最も適した地下空間を創り出す。
その地下空間こそ『地下迷宮』と呼ばれる存在だ。
その内部構造や規模は、核となる魔石の性質や大きさによって様々だ。火の海が広がっていることもあれば、凍てつく氷土や広大な地底湖、砂漠等例をあげればきりはない。
更に、魔石が創り出すのはそんな内部の環境だけではない。
魔石は自身の創り出した地下迷宮内に限り、『魔物のような生物』を創り出すことが出来るのだ。
一般にその存在は『魔物擬〈ノンスター〉』と呼称され、寿命などはなく食事や睡眠、繁殖行為なども必要としない。魔石から供給される魔素のみで生命活動を維持している。
縄張り意識等も存在せず、魔物擬同士で争うことはない。
唯一、地上から入って来る侵入者にのみ、敵対行動を起こす存在である。
また、魔物擬はその生命を維持できず消滅したとしても、時が経てば魔石の力によってその身体は再形成されるといった性質を持っている。
そのため、地下迷宮内で何の対策もせずに魔物擬を倒したとしても、地下迷宮内部でのその全体数は決して減ることは無いのだ。
この再形成止める手段は細かく言えば二つ。
核となる魔石を地上へ持ち出すか、地下迷宮内の魔素濃度を一定値以下に下げる事。
どちらにしろ『魔石の力を失わせる事』以外には方法はない。
更に地下迷宮には他にも特殊な性質が兼ね備わっている。
それは地下迷宮内で命を落とした時、その死体は魔石へと吸収され、砂のように消え去ると言うものだ。
これは魔物擬だけの話ではない。
地上の生物ですら例外ではないのだ。
死後に地下迷宮内で再形成されるのは魔物擬のみと言われている。
地上の生物が死後、地下迷宮内で再形成されたと言う事例は、未だ確認されたことはない。現推測として、地下迷宮内で地上の生き物が死んだ場合、その人格は完全に消滅し魔物擬の再形成に消費されると言われているが、それを確かめる術は今の人間にはない。
またその一方で、人間の身につけていた武器や防具等に関しては、生物には該当しないため地下迷宮内に残留し続ける。
そして、それらの遺物は魔物擬の習性により、地下迷宮の奥地へと収集されるのだ。
自然に発生する地下迷宮には、人々が想像するような『宝』などは存在しない。
しかし、地下迷宮内の創りが凶悪であればあるほど、その内部には武器や防具などの宝が残されているのも事実である。
そのような性質を持つ地下迷宮に潜るのはいったいどんな者なのか。基本は人間、その中でも『冒険者』と呼ばれるもの達が主なところだ。
彼らは主に魔物を狩ることを生業としているが、警備の仕事や人探し、薬草採取等々広く見れば便利屋のような存在である。
そんな彼らは魔物擬の素材を目的として、地下迷宮へ潜っている。
地下迷宮は核となる魔石を失えば、その活動は停止する。しかし、それを逆手に取れば『魔石を失わない限り魔物擬は再形成され続ける』ということなのだ。
冒険者達はその性質を利用し、魔素が濃く危険な魔物擬が潜んでいる深い階層ではなく、魔素濃度の薄い浅い階層で魔物擬を狩り、その素材を地上に持ち帰り日銭を稼ぐ。
地下迷宮の外に出してしまえば、魔石に再吸収されることもないため、その素材も消滅することはない。
そうやって魔石の力を徐々に弱めていき、再形成の兆候が薄くなったタイミングで少しずつ奥へ潜っていくのが一般的な地下迷宮攻略方法である。
魔石の力を弱めず、地下迷宮の最下層へ潜れる者などは限られていると言われている。最低限A級以上の実力を持つ冒険者、つまり『国家を滅ぼせる力を持つ魔物と渡り合える実力者』でなければ、ただの自殺行為とさえ言われている。
特にディビナス帝国の東南側に位置している『ユグコットルの大森林』、その内に存在している地下迷宮に関しては、一回層目ですら手を出すこと自体が無謀と言われていた。
浅い階層の危険度はB級冒険者が適正、つまりは『町を滅ぼせる力を持つ魔物を討伐できる程の実力者』とされている。特に『魔毒』に対する対策を怠れば、一階層目であっても地上に逃げることもできず、毒虫達の餌食となる。
人間が攻略できたのは一階層のみ。
およそ一年程前、一階層目での魔物擬の活動が緩やかになってきたを見計らい、B級冒険者パーティ三組が次階層へと潜っていったこともあった。
しかし、彼らは誰一人として帰還することはなく、一階層目の魔物擬の活動も直ぐに元に戻った。
その迷宮を人間達は『蠱毒の地下迷宮』と名付けられた。二階層目の探索難度はA級冒険者パーティ複数が適正と定められている。
今は一階層目の活動が緩やかになることを待っているが、そもそも一階層目ですら手を出すことがためらわれている分、緩やかになることなどはあり得ないのだ。
そして今、そんな危険な地下迷宮の入り口付近に茶トラ柄の子猫が一匹、佇んでいた。
『見た目はただの洞窟っぽいけど、嫌ぁ〜な魔毒のニオイがプンプンするね。鼻痛い…………さて、魔石も地下迷宮もあんまりピンと来てないけど、早速攻略と行こうか』
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