恋人とプールに行って友達と帰ってきた。
俺は夏真っ盛りの8月某日、彼女の清良と温水プールに行く約束をしていた。
清良の水着姿、絶対にかわいいだろうなぁ。
楽しみにしていたのに、思わぬ展開が待っていた。
更衣室から出たところで待ち合わせしていた。
白いワンピース水着の清良はかわいい。
が、しかし。
「清良、なんで男と一緒に来ているんだ!?」
俺と同年代の青年が清良に詰め寄ってきた。
「え、あ、孝? な、なんでここに」
清良は明らかに動揺している。
「僕の妹が、写真を送ってきたんだ。清良が若い男と腕をくんで歩いているのを見かける、毎回違う男だって。真偽を確かめるために追ってきてみたら、これだ」
「ううぅ、あのアマ写真なんて取ってたのかよ! 余計なことしやがって!」
いつもの優しい清良ではない、ひどい形相で暴言を吐く。もしかして俺、騙されていたのか。俺のこと初めての彼氏だって言っていたのに。
「陸、違うのよ、これは違うの。私は何も悪いことなんて」
「騙して付き合うのを悪いと思わないならこの先やっていけない。別れよう」
俺は縋ってくる清良の手を振りほどいて水に一度も入ることなくプールを出た。
初彼女だったのになぁ。
騙されていたショックと怒りと半々でやるせない。
このあとどうしようか空を見上げていると、孝が俺を追ってきた。
「陸くん。君は清良のこと好きだったんだろう。こんな形で別れる道を作ってすまなかった」
「いんや、なん股もされていること教えてもらえてラッキーだったよ。思えば高いもん奢らされてばかりだったから、最初からサイフくんだったんだな俺」
「僕も同じだよ。清良と妹が大学で同じ講義をとっているからわかっただけで、妹に聞かされるまで知らなかった」
俺たちはプールから帰る途中、バーガーショップでやけ食いして、愚痴を言い合って、いつの間にやら友情が芽生えていた。
同じ女に騙された者同士。
それから孝と連絡先を交換して、一緒に婚活して、なんやかんやあって俺は孝の妹、真心と結婚した。
ある意味、清良がなん股もしたからこそ、俺は家族思いな真心と出会えたのか。縁を繋いでくれたことだけは清良に感謝しよう。
義兄は婚活パーティーで誠実な女性とめぐり逢い、二人の子宝に恵まれた。
真心情報によると、清良は他の股がけしていたキープくんたちにも振られて30過ぎても独身らしい。
いい男紹介してと言われても、大切な兄と夫を騙した相手だから許さないと息巻いている。
我が妻は最高で最強のいい女である。