3-39 転生免許
「断る」
情け無用に斬り捨てる企院はむしろ、情があるのかもしれない。無念と思う前に、走馬灯も見ずに諦めるしかないから、現実を丸々と受け止められる。私の冒険もここまでか、と天の光がわずかに差してきたかと思うと、企院は手のひらを返すようなことを言った。
「私もお前が処分されるとなっては、私にも何か疑いがかけられるかもしれない。運のいいことに、このことを知っているのは私たちだけで、そもそも私達は本物の魔物を見たことがあるわけではないし、コイツが魔物かどうかも定かではない。コイツが新種なのかもしれない」
確かにそうかも知れないが、そうじゃないかもしれない。曖昧なことばかりなのは間違いない。うん、と頷くが、まあ、そう自分に言い聞かせるしかなかったのだが。
「そこでだ。お前はどうする、シスター」
「この子は新種の何かです」私は即答した。
企院は足を組み直し、ニッと笑う。「それは天霊府に対して、シスターとして中々よろしくない行為にも思えるが、それで良いか」
「良いです」そうするしかないじゃないか。だって私が処分されるのかもしれない。もしかしたらこの子を府に連れて行くことで何か別のフラグが立つのかもしれないが、立たないかもしれない。そんなリスクをわざわざ背負う必要ない。考えれば考えるほど、『かもしれない』ことばかりだ。
物語を進めるにはどうしたら良いか、そんなことを念頭に置きながら動いていたが、今回ばかりは命に関わる。物語を進めるか否かは関係なく選択したんだ。
「よし、分かった…それに私の査定にも響くだろうしな」
「企院さん…」ハハハと大きく笑うきいだが、私は全然楽しくない。
「この一隊が、これから先、魔物を見たことがある連中と出会わないことを願おう」
「はい」
「ソイツはお前が面倒を見ろよ。人前に出る時はフードを被れ。いいな」
私とこの子は同時に大きく首を縦に振った。




