3-34 転生免許 ~ついてきた女の子
「お母さんやお父さんはどこ?」
「いない」その子はそう言うだけで、顔を見せようとしない。私を掴むその細腕は力強く、身に纏っている布の切れ目からはやはり人間ではない肌だ。
私はキョウトを見て「どうしましょう」と投げかけてみた。
「一度、『企院』さんに相談してみましょう。親御さんがいるとしたら探す手伝いになると思いますし、連れて行くにしても話を通さねばなりませんし―」
それもそうか。結局は馬車に戻ってからだ。
「ほら、一緒に行きましょう」私はその子の頭をポンポンと叩いて手を差し出した。その子は私の手を力強くギュッと握りると、瞬間にして手に衝撃が走った。「ちょ、ちょっと…もう少し優しく握って欲しいな」その子は頷くと力を緩め、その代わりに私がほんの少し握った。するとその子は二回ほど優しく握り返した。
成り行きとはいえ、変に懐かれてしまった。もしもあの時、男たちに絡まれなければ、と思い起こすと、不思議と不思議ではないように思えた。これも筋書き通りというか、不自然な点があって、それをつなぐと線になって…簡単に言うと、物語が動いているというわけだ。
波に乗っているのか飲まれているのか、それは定かではないが、進んでいることには違いない。舵取りをして無事、目的の島へ―
私達は馬車まで戻り、まずは荷を積む指揮をする企院に帰ってきたことを伝えるが、彼女は始終この子に釘付けだった。
そして企院は声を張り上げ、私を睨みつけた。「またお前はこんなモノを拾ってきたのか」
「こんなモノ?」前に拾ってきたものとは何のことか、覚えがない。
企院はさらに声を張り上げる。「バカモノ!先の集落では旅人、そしてその前はその男」キッと企院はキョウトを睨みつけると、キョウトは気まずそうな笑顔を作るしかなかった。「お前はどこかに出かける度に…」
私もキョウトに続いて肩をすくめて苦笑いするしかなかった。
企院という人は、この一隊をまとめて安全に旅を進める役割にあった。元はシスターであり、昇級すると奉司と呼ばれる階級になる。それはシスターを束ね面倒を見たり、府の任に就いたりと、何でも屋と言っても過言ではない。彼女がこの旅の任を受けた時の人員編成も彼女が担当だった。つまりは私の先輩である。
企院からの説教が旅での日常だったので、今回もあるものとして覚悟した。何でも正論なものだから、私は反省するしかない。
企院は何か言いたげに、しかし反芻してはやはりグッと堪えると、プイと自分の作業に戻った。




