3-33 転生免許
「分かりません」あまりに率直に即答したものだから、男たちは顔を見合わせて笑った。理由が分からずお金を支払い、何も得しないのに堂々と分かりませんとは余程の阿呆でないことにはあり得ないし、ましてそれがシスターともなると滑稽なのだろう。私だって変だと思う。それこそ成り行きなのだと思う。
私はきっと、顔の中央に力が入っていることに気付いていない。男たちの笑いは大衆に伝播し、もはや笑い者だ。恥ずかしくて顔が赤くなるより先に不可解な自身の行動と言動に苛立つが、それも熱くなるたびに水をかけられてはプツプツ燃焼し切れない様子で、つまり怒りの矛先がない。
私は男たちの提示する値段を支払い商品を受け取って、それらをその子に渡した。「盗んじゃダメですよ」
その子は何も言わずに受け取り、大衆の間を縫ってあっちの方へ消えた。
そして私も帰り道に戻り、すかさずたいしに紛れた。次第に頬がトマトのように真っ赤に実るのが分かる。いくら急いだ所で着ている服に注目されていることに、いつになっても気付かなかった。
薄情なキョウトは帰り道に、たびたび私に話しかけたのだが、私は馬車のある所まで口を利かなかった。だって私の護衛なら、あんな些細な仲裁でも私の味方になって、むしろ率先して解決してくれてもいいじゃない。だがキョウトはずっと同じ場所で、私と男たちの様子を大衆と一緒に見ていたのだ。
『この、引きこもり!』とでも蔑んでやろうと思ったが、心の中までで留めた。それ以上は流石に、互いに決して良いとは思えなかった。キョウトはアズミというシスターのために引きこもりから、勇者として護衛になろうと純然たる決意で旅に参加しているのだ。
キョウトは扱いやすくて単純で、だが素直でまっすぐな、まるで王道の勇者の性格だ。そんな彼はまだまだ勇者になりきれてはいない。
何にせよ、私は温かく見守りつつ、懲らしめるまでに思い留まったわけだ。
しかし話しかけられても頑なにツンと無視していた私だが、そんなわけにもいかない状況になってしまった。足元で何かぶつかられたかと思えば、ボロボロのマントですぐに気付いた。
その子は強い力で私の服の裾を握った。少し歩けばついてくるし、裾をパタパタと振ると、今度は私の足を抱き締めた。
さすがに歩くこともできずに話しかけてみた。「ねぇ、どうしたの?」
その子はカラカラと喉を鳴らし「ついて行く」と辛うじて聞こえる声をだした。




