3-31 転生免許 ~しばしの別れ
「はい」私は唾を飲み込んだ。正直の話、そこまで重要な物だとは思っていなかったが、ここでこの話が出るということは、まさに核心なのだろう。
「その免許がいやはや、この物語の鍵になるかもしれないんだ。まだまだ分からないことばかりだから、私はその免許を管理している、ここから南にある道の国に行くことになったんだ」
免許の管理、それは更新や発行をする所だろうか。「免許を管理しているのは『府』ではないのですか?」
手引は目を丸くし「『府』を知っているのかい?」と尋ねた。
「知ってるも何も、すぐそこにありますし、先ほどキョウトさんの免許の更新に行きました」
私がそう答えると、一瞬空気を飲み込むような沈黙が流れた。そして手引は気付いたように眉が跳ね上がり、花が咲くようにみるみる内に笑顔に満ち満ちた。「そうだよ、もうそこまで知っているのかい。すごいよ」
褒められることにはやはり慣れない。私は頬を赤くし、眉をきゅっと結んだ。
手引は頷き続けた。「そうはそうなのだけど、実はその親玉というか総本山というか、本部が道の国にあるというわけだ」
なるほど、そこに何かしらこの物語を綴じるためのキッカケがあるかもしれない。そういうことだろう、そういうこと…
私の目からは、ポロポロと大粒の涙が溢れる。別れが短いのか、長いのか、それは分からない。ただ唯一、気が休まる相手と別れる事実が辛かった。
「一生会えなくなるというわけではないのだから、そんなに泣くことでもないよ」そんな風に手引は落ち込んだ私を笑って励ました。そして包み込むように優しく私を抱き締めるのであった。「アミちゃんは感性が豊かだなぁ」その底なしとも思える明るさは私を暗い所から引き上げてくれる。ハハハ、と笑い飛ばす声は耳に心地よさが残る。
手引は私がトイレを出るのを待った。私は顔を洗って目が赤くなるのが収まるまで、その様子を手引は見守っていた。
そしてついにしばしの別れの時、トイレの入り口の壁にもたれかかる手引は手を高く掲げた。私たちは何も言わずにガッシリと手を握った。
そして私は振り返りもせず、キョウトの元へ戻った。




