3-29 転生免許 ~キンキラの府へ
「キンキラの府へようこそ」若く見える彼は首元の襟に差した眼鏡をかけた。「どうぞお好きな椅子におかけください」
私たちが彼に近い椅子に座ると、彼は私の前の椅子に座った。「私はこの府の管理をしております『飛砂チュウリ』です。ええと、シスター...」
「私はアミ...」私はコホンと咳ばらいをし「『アズミ』。『竜頭アズミ』です」とまるで緊張で言い間違えた演技をしてみせた。自然に見えただろうか。
この物語では、私は「シスター」と呼ばれることがほとんどではあるが「竜頭アズミ」というのが名前である。
「シスター・アズミ、本日はどんなご用件でしょうか」
「私は用がなくて、こちらのキョウトさんの付き添いで参りました」
「飛砂さん、転生免許の更新をお願いしたく...」キョウトは免許を飛砂に差し出した。
飛砂は免許を受け取り免許を眺め「分かりました」と、免許に腕輪をこすりつけるように半周させた。そして再び免許を確認し「終わりました」とキョウトに免許を返した。
それはまるでマジックのよう。キョウトが受け取った免許をのぞき込むと、確かに『無』から『卑』に変わっていた。どういう仕組みなのだろうか。
キョウトは喜びが表情ににじみ出て、体を揺らして小さな免許を大事に両手で握りジッと眺めていた。
「以上になりますが、他の用事はございますでしょうか」
「特にありませんが…」もう帰っても良かったのだが、府に入ってから免許のことよりも気になることだらけだった。私はおもむろに辺りをキョロキョロとし、見たままをそのまま聞いてみた。「ここは何というか、ガラン、としているといいますか、いつもこんな感じなのですか?」
飛砂は口元を緩め「そうですね、キンキラの府はこんな感じです」と職務を解かれたようにサッパリと答えた。「府の立地も悪いですし、来客があるのは月に一回あれば多いくらいです」
「ほう…それではだいぶお暇なのではありませんか?」
「そうですね」飛砂は立ち上がり府の中を歩き始め、そしてイスに手をかけ「これは少し前...」次のイスに手をかけ「これはその前...」と次々にイスを紹介した。「ほんの少し、しっかり見るだけで違いが分かります。デザイン、手触り、馴染み...時間があるのでイスを作っているのですが―」
暇だからイスを作っている。同じタイミングで私とキョウトは顔を歪め驚きを隠せなかった。
「気付いたらこんな数になってしまいました」飛砂は気さくに笑うが、その軽く浮いた声はイスの出来と数に比例していない。




