3-23 転生免許
目的地の鎮埠までは大体一か月弱だという。その途中で総の国の中央に位置する、商業の国に寄るそうだ。総の国の中には商業の国を含めて五つの国が存在し、西に武の国、北に科学の国、東に同盟の国、南に道の国がある。
次第に明るみになるこの物語は、知れば知るほど世界は広くなる。しかし足りないピースが埋まっていくようで新たな発見をするたびにワクワクした。
商業の国までの旅路を私はこの物語の文字を覚えることに専念した。手元にあるこの世界の聖書が一文字も読めなかったからだ。全て読めなかったとしても、シスターであるので理解はしていないといけない。
そして商業の国の町『キンキラ』に着いた。それは本に夢中になっている私の耳に飛び込んでくる。賑わう人の声が町から離れていても聞こえる。キンキラは町と言っても、人が暮らすような場所ではない。大平原のど真ん中に位置し、背景として商人がこの大陸航路の真ん中で商売を始め、気付けば多くの商人が集まり町となったという。だから建物なんてほとんどなく、馬車やテントがお店となっていた。
「すごくきれい...」馬車から身を乗り出してキンキラの町を眺めると、色とりどりのテントが鮮やかだった。
「人口のほとんどは商人ですが、自治のための役人もおります。人の出入りが激しく、稀に人間以外の種族がいるそうです。町と言うよりは市場というイメージが強いですね」
人間以外の種族、どんな種族がいるのだろう。異世界の住人を思い思いに想像し、心が弾んだ。
馬車は町の中には入らなかった。町はお店で渋滞し、狭い路地に人が多くひしめいていた。だからキンキラを訪れる来訪者は町の外に馬車を駐車する。それを管理するのは役人で、駐車代はキンキラの収入源でもあった。
一行は町に入る準備を始め、それを待っていた私は尾張に呼ばれた。
「ここの文字は覚えたかい?」
「そこそこ読めるようになった」ここから町を眺めて、目に入った文字を指差し話して見せた。
「なるほど、順調みたいだね。僕らなのだけど、これからこの町で情報収集に勤しもうと思う。だからキミから少しの間、目を離してしまうんだ。自分からトラブルの種を植えないようにだけ気を付けて欲しい」
「うんうん、分かってるって」尾張たちとは旅の間、食事のたびに話してはいたが、どちらかといえば接触する機会が明らかに減っていた。そのせいかこの物語を綴じるという使命感が薄れ、この物語の住人であろうという意識がより強くなっていたのかもしれない。
そんな私に手引は笑顔で言った。「シスター、私たちから離れすぎないようにね」




