3-19 転生免許
「どうやら聞かされてないみたいだね...もしかしたらだけどシュウなら、聞かれてないから、とか、言ってもしょうがない、とか、そんなこと思ってそうな」
「ああ、思ってそう...」
「まあ、知っておいてもアミちゃんなら大丈夫だと思う。うん」
何か意味深のように感じる手引の言葉に私は思わず聞き返した。「大丈夫って?」
「うん」手引は頭に手を組み、天井を見上げた。「例えばだけど、この世界の住人が殺されたり、理不尽な目に遭っていたらどう思う?」
「とても嫌」
「そうそう、そういう気持ちがあればいいの。昨日のアミちゃんの様子、前の物語で経験したことを思い出して感情移入できる子なら大丈夫かなと思って。この世界が小説の世界と知ったら、創作物で作り上げたキャラクターなんだから傷ついたり、死んでも物語の都合だからしょうがないとか、そう思っちゃう綴じ師もいるんだよね」
古い建物の独特なしっとりとした空気が鼻腔をくすぐる。窓から差し込む月明かりが部屋を優しく包みこむと、はっきりと見えてきた手引の寂しそうな横顔はまるで古い友人でも思い浮かべるようであった。
「確かに私たちとは関係のない存在なのかもしれないけど、でも、なんか嫌だよね」
乾いた笑い声は手引の切なさを感じるのだが、彼女の心の底から沸々とした熱いエネルギーも同時に感じた。
「うん」手引に合わせたわけではない。私はできることならば良い結末を見たい。
「良い終わりと書いて『終良』だなんて、そんな方向に導いてあげようね」
「うん」
静けさにわずかな鼓動が高鳴り、これから先の不安も入り混じる。前の物語ではなかった決意を心の炎に燃やしてのろしを高く上げた。




