3-17 転生免許
「キミは九、で残りは僕らという約束だろ?だからキミに『九』を渡した」
「タシカに...」
ライラは食い下がるが、こういうところが憎めない。「とんちを利かすな」とか「九割だ!」とか、主張をすれば良いものの、地団駄を踏むライラを見ると可哀想に見える。だからこそ助け舟と言うか、それっぽい説得で尾張に納得してもらうことにした。
「ねえねえ尾張さん。私たち、そんなにもらっても持ち歩けないよ」
「確かに」尾張は金貨が入った小さな袋を私や手引に持てるだけ渡し、自分の分も確保した。「じゃ、残りはキミのだ」とライラに大きな布袋を渡した。
「イイノか?ヤッター」ライラは子供のようにはしゃいだ。
結局、全体の七割ほどがライラに渡り、ライラの思惑としては多くもらうというかなりザックリとした目的は達成できたのだろう。ライラは布袋の口を開いては目を輝かせて、重さを確かめるように上下に持ち上げる。
「じゃ、お疲れ」
「稼ゲルしごと、マタ呼べ」
尾張はライラを栞に戻し、やれやれと仕事を終えたように一息ついた。「さあ、行こうか」
「ご飯?」すっかり限界を迎えたのは私だけではない。手引もげんなりとしており、目がひっくり返り白目をむいていた。
「そうそう。もう限界でしょ」
そういえば日中に練り歩いていて見つけた、美味しそうな匂いが漏れ出るレストランがあった。尾張を先頭に向かう方向はきっとそこだ。私は胸を踊らせ、ゾンビのようにうめき声が漏れ出る手引の手を引いて尾張についていった。
「はー、もう元気が出た」手引は宿屋のベッドに飛び込み、手足を四方に伸ばした。
「これから寝るのに、元気が出てどうするんですか」
お腹も満たされ、ベタベタしていた肌の汗を流して、鋭気を十分に養えたことには違いない。しかしながらお世辞にも良い部屋だとは言えないのだが、昨日の野宿と比べたらスイートルームとなる。
尾張とは別々の部屋で、私は手引と一緒の部屋だ。部屋はまだ余っているようだが、知らない土地で一人部屋だなんて寂しいから良かったと思える。
小さなランプが殺風景な部屋の構造をうっすらと照らし、何もないから暗くなったら眠るためだけの部屋であるのだなと想像できる。
つまりはすぐに布団にもぐりこみ、外から聞こえる木の揺れる音や夜の動物の鳴き声に耳を傾けた。あまりに静かで、また慣れていない布団の匂いに目が冴えてしまう。
「アミちゃん。起きてる?」
「起きてますよ」
手引も眠れないようで、私が起きていることに喜んでいるようだ。




