3-14 転生免許
「ないよ」手引はキッパリと言った。「確かにそう見えたかもしれないが、ブックマークはあくまで所属している物語での性格や好みに則って動いている...つまり今回の紅さんの場合は尾張がタイプだったのかもしれなくて、タイプに対しては遊ぶ嗜好があるのかもしれないね。あくまで憶測だけどね」手引は手早く着替えを済ませた。「会話もそう。彼らの性格や所属している物語の経験に基づいて応答は決まるんだ。会話が自然に感じるよね」
私はなるほどと思うものの、それって人間にも同じことが言えないかと思った。人間と似ている、同じだからと言って、自我を持っているかどうかなんて結局のところ分からない。私は口をつぐみ、納得したようにうなずいた。
「よぉし、着替えた。シュウを待たせるとうるさいからね。アミちゃんも早く着替えるのが良いよ」手引はそう促すと、ポケットに入っていたバンダナを取り出して頭に巻いた。
私はというと首を通す穴に手を通し、ローブを着るのに手間取っていた。手引にも手伝ってもらい、ようやく着ることができた。「どうだろう、手引さん」
「いい感じじゃん。それらしい、うん」
私は自分の尻尾を追いかける犬のようにクルクルと回り、自分の服をあちこち見た。
「じゃあ、行こうか。シュウがしびれを切らすと面倒だ」
私たちは茂みをくぐり、尾張の元に戻った。尾張はすでに着替えを済ませており、その場でしゃがみ木々の間にぽっかりと空いた穴から空を眺めていた。
「やあ、着替え終わったね。それじゃ、行こうか」
「それはいいのだけど、お腹空いた」私の腹の虫は鳴りっぱなしだった。
尾張と手引は顔を見合わせて「それは無理」と声を揃えて言った。
「なんで」
尾張は体内の酸素を抜け切るように長いため息をついた。「僕が異世界モノを嫌う理由を覚えているかい?」
「えっと...ご都合主義で、不便で面倒...あ、お金が使えない」
「そうそう。お金がなければ腹の虫も収まらない」
「じゃあ、お金はどうするの?」
「方法はいくつかあるけど、まあ夜になればどうにかなるさ。ひとまずそれまでは集落を偵察しよう」
まだ日は高くなりきっていない。つまりはあの日がアーチを描いて見えなくなるまではお預けということになる。どんな方法でお金を手に入れるのかは分からないが、そんなことさえも考えたくない。
私は集落に向かう尾張に続いて歩いた。




