3-13 転生免許
「うん、そう。例えばなのだけれど、尾張さんが今度また紅さんを呼んだ時に紅さんの言うことを一つ聞く、とか」
「なんでもよろしおすのん?」紅は見る見るうちに笑顔になり、クローゼットから先ほど取り出した衣装の数々を手に取った。そして首を傾け「どないどす?」と上ずる声を抑えるように尾張に聞いた。
「いいんじゃないの」手引は無責任に言った。緩み切った口に波が立っている。
「お前な、他人事だと思って...」尾張は苦い顔をするも、すぐに決断した。「いいよ、そうしよう」
紅は高ぶった感情を抑えようと大きく息を吸い込んだ。落ち着いたようだが恍惚とした表情で胸を押さえて穏やかに言った。「ほな、お代は次回でよろしおす。それと…ひとつお願いごと、聞いてくださいまし」
「ああ、分かった。約束だ」
紅は目をらんらんとさせて、クローゼットをトランクにしまった。そしてペコリとお辞儀をして「それでは、またよろしくお願いいたしますえ。尾張はんも、お達者で」と尾張に笑顔を投げかけた。栞に戻っていく紅と私は目が合い、紅は姿が消える直前に私にも笑顔を見せた。
「それじゃ、着替えて集落に入ろう」
「私たちはあっちで着替えよう」手引は深い茂みを指差し潜っていった。
「尾張さん、見に来ないでね」私はすでに着替え始めていた尾張に言ったのだが、私に目もくれずに苦い顔で見に行くわけないと表現した。
手引についていき、茂みの奥はちょうど顔まで隠れる高さの茂みの壁ができており、少しかがめば外からは誰からも見られることはない。
私たちは着替えながら、先ほど紅が尾張に当てた服について話し始めた。
「私は番長っぽいのを見てみたいです」
「アミちゃんはカッコいいのが好きなのか。私は女盗賊のとか面白そうだな、て思ってる」手引は無邪気に笑った。
私は再び尾張が紅に女盗賊の衣装を当てている様子を思い出し、冷静に着た様子を思い浮かべたがやはり番長服がいいなと思った。
「紅さんって尾張さんのこと好いているみたいでしたよね」
「そうだね。でも、まるでおもちゃで遊んでいるようにも見えたのは滑稽だった」
「確かに」それは紅が自身の意思で動き楽しんでいるように見えたので手引に共感できた。しかし引っ掛かることがあるわけで、それは『自我』を持っているということではないか。「まるで『自我』を持って動いているように見えたのですが、ブックマークは自我はあるのでしょうか」




