3-8 転生免許
私はレニーの隣に座り火にあたった。
パチパチと火の粉を弾く音に耳を傾けた。「あったかい」
「そうだろう。急に冷えてきたもんね」手引は火を当てている手を握って開くのを繰り返した。
「尾張さん、あんなところにいて寒くないのかな」私は暗い森の近くにいる尾張を見た。
「アミちゃんはあんなことを言われてもシュウを心配するんだ」
私は座りなおして手をこすり合わせた。「そんなに悪い人だとは思えない」
「そっか」手引は小さくうなずいた。「けど、『そんなに』というのは少しは思っているんだ」
私と手引は顔を見合わせてにっこりと微笑んだ。
「手引さんに聞きたいのだけれど、綴じ師って一つの物語に複数人いるものなの?」
「いないな」手引はキッパリと答えた。「けれど、物語の規模感、つまり綴じるのが一人では難しい場合は複数人のことがある。後は研修みたいな時な。新人に綴じ師が行うことを教える時は一緒に行動するんだ」
「へー。ということは、今回は物語の規模が大きい、ということかしら」
「その可能性が高い」
手引の言い方はまるで尾張と重ねて見えた。
「異世界モノは久しぶりだから、どんな物語なんだろうな」手引は木の枝をたき火にくべた。
「そういえば手引さんは『シュウ』って呼んでいたのだけれど、それって尾張さんの名前のこと?」
「ん?そうだけど、聞いてない?」
たき火でできた私の影はゆらめき、しぼんでいくように小さくなっていく。「...うん」
「ああ、なるほど...『尾張』としか聞かされてないんだな」手引は納得したようにうなずき「あいつの性格だからしょうがないよ」と私を励ました。
私も尾張なら聞かないと、いや聞いても名前を教えてくれないというのは理解できた。しかし手引には名前を教えているわけで、その二人の関係性が少しうらやましく、寂しくもあった。
森田さんは罠と私たちの寝床を作ると、栞に帰っていった。レニーは木の実を集めていたのだが、どれが食べれるか分からないものだったのですべて火にくべた。レニーは残念そうに火の中で燃える木の実がなくなるまで背中を丸めて見つめていた。
することもなく、ただ時間が過ぎていく。空腹が悪目立ちをしてお腹が鳴る。
「私、先に寝るね」大きくあくびをしたレニーはたき火に背を向け、猫のように体を丸めて横たわった。




