3-6 転生免許
「なんにせよ 考えてみたら、シュウがここまでこの子を残しているのだから何か訳でもあるだろうに。もう何も言わんよ」手引は私の前まで歩み寄り、手を差し出した。「『テビキシオリ』。宜しく」
私は手引の手を握り「―アミです」と言うのだが、私の苗字ってなんだっけ。
「それで、これからどうするんだ?」
「レニーが見つけたっていう集落に向かおうと思っている」
「そうか、それじゃあ行こう」手引はレニーの背中を押して、森の奥へと進んでいく。
杖をつく尾張もゆっくりとその後に続くが一度私の方を振り返り「行くよ」と声をかけた。
尾張には今まで色々と言われてきたが、今回のことが一番響いた。足を痛めている尾張ほどではないが、私の足取りも重かった。
進めど進めど変わらない景色。足場は悪いし、尾張は遅いし、日も暮れる。見通しが悪く昼さえも薄暗い森の中、夜になってしまえば何も見えなくなるだろう。
この行軍の、言葉の通り足を引っ張る尾張は足を痛めながら無理して歩いている。無理すれば悪化するだろうに。
手引とレニーは先に歩き、その中に私が馴染めそうになれず、私は後ろにいる尾張のちょうど真ん中にいた。時々後ろを見て尾張がついてきているのを確かめて、遅れそうになったら前の二人に少し遅くしようと提案した。
「シュウはあんなんだけど、置いていっても大丈夫だよ」
手引はそう言うのだが、それでも置いていくことはできない。『パペット』とまで言われても、尾張の辛そうに歩く様子を見れば私は不憫に思うのだった。もちろん尾張に話しかけ辛さはあった、できれば話しかけたくなかったし、尾張は嫌味な上司みたいなものだから、グッと拳を握りお腹に気合を込めてから尾張に声をかけた。
「ねぇ、尾張さん。足大丈夫?」
「ああ、気にしないでかまわないよ。遅れてすまないね」
尾張の額には汗がびっしりと張り付いていた。
「でも辛そうだし、レニーさん力持ちそうだからおぶってもらえばいいのに」
「嫌だよ、自分でできることは自分でしたい。それにおぶってもらうなんて嫌じゃないか」
「じゃあ、他のブックマークに頼めばいいじゃない」
「嫌だよ。ブックマークを呼ぶのにも色々と大変なんだよ」
「大変?」なんか尾張の言葉に引っ掛かったのだが、『ブックマーク』で思い出したことがある。「そういえばゴブリンが現れた時、なんでブックマークを使わなかったの?」
「ああ、気が動転してた...確かにその通りだね。人間って動転してたらシンプルに逃げるんだなって思った」
私と尾張は声を合わせて笑った。




