3-5 転生免許 ~新綴じ師・手引
「手引か、久しぶりだな」尾張の知り合いであろうか。慣れ親しんだように口元が自然と笑っていた。
「てことは、なんか面倒そうだな」
「そのようだね」
「と、その前に...」手引はレニーに駆け寄った。「おお、こっちも久しぶり!」
「久しぶりだね、手引さん」
突然『手引』という女性が現れたことに私は驚いたが、それよりも抱き合っている二人を見つめ、なんだか関係のある三人から溢れた一人になってしまったようで寂しくもあり、うらやましくもあった。すぅっと私の存在がこの場から遠ざかるようで。
「ところでキミは誰?」手引とレニーは私を見つめる。
「わ...私は」
「あ、待って、分かったかも。もしかして、新しい『綴じ師』?」期待を膨らませた笑顔で手引は言った。
「いや、その子は二つ前の物語の『登場人物』だよ」
「え...なんでそんな子が?」ほんの数秒前の笑顔は潮が引いたように冷めていた。まるで敵でも見るような目つきで。
「彼女は自我が芽生えているが、まだ確証のない仮定の話なのだけれど、手引が知るような『それ』ではない。彼女は物語のいなくなった登場人物としての代役的な存在になりうる...つまり良い言い方で言うと、僕たちにとって自由自在に指示し動いてくれる都合の良い登場人物、『パペット』さ」
パペット...まるで操り人形みたいに聞こえる。尾張が私を含めて物語の登場人物に対しての真意なのかもしれないが、そんなことを自慢げに言わないでほしい。それに私は登場人物ではあるけれど、まだ私は人間だと信じている。
手引は「代役ってのはつまり...」と恐る恐る聞いた。「悪い言い方で言うと―」
「手引は察しがいいね。食っちまうのさ、登場人物を。入れ替わりで彼女がその登場人物に成る。『パペットイーター』とでも言おうか」
「え...ダッサ」手引は冷めた目つきで尾張を見た。「相変わらずセンスの欠片も感じられないネーミングセンス」
心なしか尾張は悲しそうな表情を浮かべ、みるみる小さくなった。尾張が言い返さないだなんて珍しい。




