3-4 転生免許
「尾張さん、あのドラゴンは何?」
「『何』って何?」
「めんどくさ。名前とか、プロフィールとか。きっと偵察してもらっているんでしょ?それまで暇なんだから教えてよ、あのドラゴンのこと」
よほど面倒くさくて嫌なのだろう。尾張は苦虫を嚙み潰したような顔でフリーズした。
私も負けじと尾張の表情を真似て顔をしかめた。
「なんだよ、その顔」
「それはこっちのセリフだし」
尾張は観念したように一息ついて首を振った。「彼女の名前は『レニー』。歴史学者。三姉妹の次女。空を飛べる。強い。オッケー?」
尾張だからこんな答え方もあるなと思い、いちいちイラつくのも面倒だ。「どういう物語の子なのかとか、何をしていたのかとか、もうちょっと教えて欲しいな」
「悪いんだが、あんまり覚えてない。ただ『異世界』ものの物語ではなかったな。それなりに面白い印象はあったと思う」
「へー。ドラゴンなのに異世界じゃないんだ」
「そこがミソだったんだよ」
少し興奮気味の尾張に水を差すように「へー、覚えているんじゃない」と言うと、尾張はそっぽを向いてしまった。
それから会話がなくなり、数十分ほど過ぎた。レニーの帰りを待ちわびて空の穴の下に近づき空を見上げると、ちょうどレニーは戻ってきた。私は急いで後ずさりをして、レニーに降りる場所を譲った。
「やほー、戻ったよ。村があっちの方にあった」レニーは暗い森の中を指さした。
「そうかい、ありがとう。それじゃ、そこまで案内頼めるかな」
「うん、いいよ」
尾張は近くにあった杖になりそうな棒を手に取り、ゆっくりと腰をさすりながら持ち上げた。「あいたたたた...」
まるで急に老けたように見えて私は笑いを堪えた。そんな私を見ていたレニーは首を傾げて目をパチパチとさせると、つい私はぷいと顔をそむけた。やはり彼女を見続けると顔が沸騰するほど熱くなってしまう。
「あなたは誰?」
急にレニーにそんなことを聞かれたものだから、心臓がバクバクと鼓動が激しくなった。ただ名前を答えればいいのに、なんと答えよう、だなんてすでに脳みそが沸騰している。
そんな時だった。先ほどレニーが指さした方向の茂みが騒いだ。
「お、シュウじゃん」
茂みから現れたのは一人の女性、ただ違和感がある。異世界っぽくない服装、いわゆる現代の服。




