3-3 転生免許 ~ドラゴン、レニー登場
なんとなく察した。異世界の大体のお金の単位は独特で、日本円を使えなければドルやユーロも使えるわけがない。
「それにね、言語も違うことが多い。何が書かれているのかわからない本、何を話しているのかわからない言葉。まあ日本語で話していることが多いけど、意思疎通に弊害が起こることがしょっちゅう。だから不自由でめんどくさい」
「へー...」確かにそうなのかもしれない。見たことがない動植物、見たこともない世界観、剣と魔法、種族や魔物、そんなRPGの世界を体験できると思ったらワクワクするに違いない。ただ別の視点から、物語を綴じることを目的とすれば、強くてニューゲームであることが望ましいのだ。だが私は『異世界』という言葉に惹かれている。「そうだけども...」
私が何かと考えているうちに尾張は栞を取り出した。すると栞から飛び出してきたのは白いドラゴンだった。ドラゴンと言っても人間大で人のように二足で立ち、靴も服も着用して腰に刀を携え、金色の髪の毛をなびかせる。耳のような触覚が髪の中から生え、ピコピコ動くのがカワイイ。女性のようで胸に膨らみがあり、体型は尾張よりは大きいかどうか。体よりも小さな翼が鳥の羽のよう。
「何の用?」ドラゴンは大きな目をぱちくりさせて服を整えた。
「ちょっとこの辺りを見て回って人の住む集落を探して欲しいんだけれど、頼めるかい」
ドラゴンはキョロキョロと森を見回し私を見つけるとジッと見た。目が合った私は蛇に睨まれたように肩をビクッとしたが、やがて密集した木々の葉の間の向こうを見上げた。
「空から?」
「うん、そうそう。お願いできるかい」
「分かった。なんか面白そうなものがあったら見に行ってもいいの?」
「ああ、いつもの遺跡とかね...ちょっとだけだよ。後、人には見つからないようにはしてくれよ」
「心得てるよ。じゃ」ドラゴンは目を輝かせてそう言うと、小さな翼を広げた。すると翼は両手を広げるよりもはるかに大きく、そして突風が吹いたかと思うとドラゴンの姿は消えていた。ドラゴンの轍に葉はくるくると舞い散り、ぽっかりと空に穴が開いた。
私はその穴の下まで走り寄り空を見上げると、はるか天高い所に黒点が一つ。「すごい...」速いのもそうだが、その姿が美しい。やがてその黒点はどの方向に行ったか分からないほど速く消えた。するとヒラヒラと落ちてくる白い羽。私は宙に舞う羽を掴み、尾張に向けて言った。「見てよ尾張さん。ドラゴンの羽」
尾張は目だけ私を見て、すぐに視線を落とした。
「もらっていいの?」
尾張は小さくうなずいた。
私はドラゴンの羽を服の内ポケットに折れないよう丁寧にしまった。




