2-48 ヴァンパイアの嫁
そしてルリは私に向き直り「まだ言えてないことがある」と始め、大きな深呼吸をした。「実はすごく怖くて、本当は...本当は...なんで私なんだろうと思ってた。双子なのに、なんでユリじゃなくて私なんだろうって。だからあの時、ユリが行ってくれた時、本当に、本当に、心から安心したんだ。このまま私は、このままずっと、ずぅっっっと、寿命を全うするんだって」
なんとも衝撃的な事実を聞いた私なのだが、ルリの言葉に耳を傾け続けた。
「だけどね」ルリは大きなため息をついた。重たい、重たい空気が地面に落ちていく。「ユリが知らないまま、押し付けられたことも知らずに、それで私のことを裏切り者だと思うんだろうな、とか思って、自分がこの先何をやろうがやるせないんだろうなて思って。お父さんもお母さんもいなくて、二人だけの家族なのに...私は身勝手さ、どっちを選ぼうと私は私を救おうとしている」
ルリにも葛藤があって、そもそも適合者に選ばれた時点で八方ふさがりだった。考えてみれば分かることだった。私は保身しか考えていなかった、深く考えていなかった。ルリは板挟みで苦しんで、はけ口がなくため込んでいたんだ。それが分からなかった自分がとても悔しい。
「どうせならカッコつけて身勝手さをぶつけたい、だから私はこっちの道を選んだんだ。やりたくなかったら研究を引き継がなくてもいいし、ユリには幸せになってほしいんだ。もう私の自己中はこれでお終い...」
それ以上は言わないで。
「これは私の物語なんだ...ありがとう、ユリ」
それはルリがもう一つの道を選ぶことより、私には最大の裏切りに思えた。でもこの裏切りはその裏切りとは全く正反対の物。決別の言葉、もう二度と会えないという言葉、なんで、なんでこんなことになってしまったんだ。
私は何も言えずにジッとルリを睨んだ。睨むことしかできないんだ。睨んでいないと、目の奥からあふれてくるものがある。口を開けると、きっと言葉が震えてしまう。それがきっと、ルリを不安にさせてしまうから。
ルリは私に届かない声で最後の言葉を告げて馬車に向かった。一度も振り返らずに馬車に乗り込んだ。そして馬車が動き出しても、窓から見えるルリの横顔は表情ピクリともせず強張っていた。
私は思ったんだ。ルリもきっと同じ思いなのだろう。
そして馬車が走り去ると、私はうずくまり、子供のように声をあげて泣いた。悔しい、悔しい、悔しい...自分のふがいなさで結局ルリにすべてを背負わせてしまった。私がやるべきことなのに。




