2-47 ヴァンパイアの嫁 〜終結へ
ルリは振り向いて私に向けて両腕を伸ばした。「ユリ、はい。バッグをちょうだい」
私はためらいつつ、ユリにボストンバッグを渡した。
「ユリ、前を向いてよ。二度と会えないわけじゃないんだから」
そう言われて気付くと、私の視界にはルリの足元があった。ルリと会うのがカプセルホテルと今回でたった二回目なのだ。それなのに沸々とあふれ出る悲しく辛い感情と、覚えのない記憶が私を包み込む。これはユリの思い出であろうか。
もう二度と会えない不安がどっと押し寄せた。
「後、これ」ルリが私に差し出したものはロケットペンダントであった。ロケットを開くとルリと私が写っている写真が入っていた。「私とお揃いだよ。大切にしてね」
そうしてルリは前に向き直り、馬車へと進んでいった。その姿は勇敢に立ち向かう勇者のようで私にはまぶしい。
私はルリの背中を見ることしかできない。視界の周りに黒いモヤのようなものがかかり、次第に狭まっていく。こうなることはいずれ分かっていたものの、悔しい、何もできない私が。私は何をしたかったのだろう。感情が沸騰し、体が熱くなる。
「ルリ!」私の叫びは黒いモヤを切り裂き、パッと視界が晴れた。
ルリはゆっくりと振り向いた。その顔は不安に満ち満ちており、今にも押しつぶされそうなほど苦い顔をしていた。
どれだけ怖かったのだろう。孤独になることもそうだが、どんなに理論的に自身が適合者であろうと、違えばやはり、死ぬまで苦しむ病が待っている。私が引き継いでいる間も、一切怯えず、気丈な姿を見せていた。私がどんなに不安な表情をしても、励ます余裕を見せてくれた。姉という立場から私の前では大きくあろう、私には気遣わせないようにしよう、ルリはカッコいい人間だ。
そんな彼女が見せた姿は、私には愛おしくかけがえのない存在となっていた。
私はロケットを握った手を前に突き出し「何かあったら行くから」とルリの見方であり続けることを伝えた。
ルリは吹き出し顔がくしゃっとなった。「何よ、それ...少年漫画じゃないんだから」
二人は顔を合わせると、小さく笑った。




