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アミテイル  作者: Yah!結う湯酔~い宵
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2-46 ヴァンパイアの嫁

 「さあ、始めましょうか」ルリは腰に手を当てて、ニコッと笑った。


 私はタケミに対して堂々と接したルリに感心していた。いやもしかしたら本来の物語の筋書きに戻ったからかもしれない。登場人物たちのやり取りで少し揺らいでいた物語が収拾したのではないのだろうか。逆に言えば、私が介入して登場人物として振るまわなかったことが証明されたとも言えよう。


 ルリは私に引き継ぎを始め、大学の研究のこと、その研究は完成間近であること、家のこと、手紙でやり取りをすること、要点をまとめて簡単に話した。


 「分かった?」


 「うん、大丈夫」


 私には町に戻り尾張に相談したいことがあった。しかしこの物語で分かったこと、私が何か行動をすれば、登場人物として筋書きから逸れてしまい、それが物語や登場人物に異常を与えてしまう恐れがあること。


 私がユリに放った言葉は、きっとユリを安心させるような温かく感じられたものだと思う。それでも私は私の考えていることをツラヌキたい。


 「準備はできてるの?」


 「えぇ。服や本、好きなお菓子とか…」ルリはボストンバッグをパンパンと叩いた。


 「まるで旅行ね」私がそう言うとルリは笑い、私もつられて笑った。


 「そうそう。後はね、お父さんとお母さん」ルリはリビングに置いてある写真立てを大事そうに持って「私、この写真が一番好きなの」と私に見せてくれた。まだルリとユリが幼く父の両腕にぶら下がり、父は顔を真っ赤にして懸命な表情を浮かべている。そんな父を見て母は笑っていた。


 その写真に写るそんな父と母はもうこの世にはいない。仏壇に置いてあった写真と同じ顔をしているからだ。


 「ねぇ、線香をあげましょ」私はルリにそう促すと、ルリは微笑みうなずいた。


 和室に入り私とルリは並んで線香をあげて仏壇に手を合わせた。線香から立ち上がる煙におりんの響きが溶けていく。


 私とルリは和室を出て玄関で靴を履いた。いよいよ別れが近づくのを実感する。ルリがボストンバッグを持つ前に、横取りするように私が持った。


 「私が持つよ」


 「そう、ありがとう」


 もっとルリと話したいことがある。もっと両親のことを知りたいし、この町を一緒に散歩してみたいし、ルリは何が好きなのか内面を知りたい。


 それなのにリビングを出てから和室、玄関、そして外に出て馬車までもう数メートルの所まで、一切会話がなかった。焦る気持ちがある私に対し、ルリは穏やかに私の前を歩いた。まるでルリは二人だけの時間を楽しんでいるようであった。

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