2-43 ヴァンパイアの嫁
私はゾッとするほど体中の血が冷えたように思えた。後ろは見たくない。
「この方は...?」ルリはゆっくりと私から離れた。
タケミは丁寧にお辞儀をして「私はルリ様の身の回りのお世話をしております、タケミと申します。本日はルリ様のお側にいるようにヴァンパイア様から仰せ仕り、同行させていただいております」と微笑んであいさつをした。
ルリはピタッと静止し「そうなのですか。それでは中へどうぞ」と家の中へと促した。
その行動は私にとって疑問でしかなかったのだが、だってこの家の中で私とルリは入れ替わる予定なのだ。それなのにタケミを入れてしまえばその機会がなくなるのではないかと危惧したのだ。「家族だけの時間を作りたい」とか言えば何とかなるのではないか?そんなことを考えているうちにタケミはそそくさと家の中に上がっていく。
とはいえ私が先に家に上がらなくてよかった。家の間取りなんて分からないものだから、ルリとタケミが入っていった部屋についていけばよい。
部屋に入ると広いリビングダイニングで、大きな液晶テレビやソファー、一般家庭にあるものはフル装備だった。
ルリはキッチンに入りお茶を淹れ始めた。「ほら...ルリ、座って。タケミさんも」自身の名前を言うというのはなんとなく抵抗があったのか、ルリは言葉を詰まらせた。
テーブルの周りにはイスが四つ、きっと四人家族なのだろう。あれ、それなら両親はどこにいるのだろう。今日は仕事でいないのだろうか。そう考えながら私は手近のイスに座った。
タケミは私の向かいに座り、ジッと私を見つめた。
「お茶菓子もあるから」と言ってルリは温かい緑茶を配った。
固い空気がその場にあり、時計の秒針を刻む音がいくつも重なるにつれて会話の切り出しが難しくなる。緑茶を口につけたら、お菓子を食べたら何か会話が始まるのではないか、切り出せるのではないかと模索を始めるのだが、それでもこの場の空気を吸えば喉から言葉が出てこない。
たまらず私は席を立って「トイレ」とだけ言葉を残してリビングを出た。別にトイレに行きたいわけではない。「トイレ」イズ「作戦タイム」だ。




