2-41 ヴァンパイアの嫁 〜城を出て、町へ帰還
翌朝、私の部屋にタケミが訪れた。「出発の準備が整いましたので、参りましょう」
タケミに案内されるまま城の外で待つ馬車に乗り込んだ。続いてタケミも乗り込んだ。きっとお目付け役なのだろう。
「さぁ、行きますよ」イチカワは手綱を操り馬を走らせた。
ゆっくりと馬車は城を離れ、両側が崖の一本道を慎重に下っていく。一本道を抜ければ馬車の速度は上がっていく。そして勢いよく森に突っ込んでいく。
私の準備は万端だった。昨夜のヴァンパイアとの面会の後、私は花丸と打ち合わせたのだ。花丸には今日のことを話し、昨夜のうちに尾張の元へ向かってもらった。花丸が確かに尾張に言伝できれば、きっと尾張も私の行動に合わせてくれることだろう。
森に入った馬車は大きく揺れる。デコボコの道に車輪がかかり馬車は浮き、地面にたたきつけられれば今度はお尻が浮いた。そして頭が天井に当たる。お城に向かった時と同じ、デジャブだ。
外はコウモリが群れる鳴き声が聞こえ、その向こうにはあの嫌な感覚がある。この馬車にはヴァンパイアの匂いがあり、感覚の鋭い魔物ほどこの馬車に決して近づいては来ない。だがそれはいる。
外を見ないようにしてタケミの方を見ると、体を使ってうまい具合に頭が天井に当たらないように工夫している。それを真似ようとしてみたが、余計に痛いところが増えたような気がする。
馬車は森を抜け、町の中に入っていく。馬車が町の中を走ると、町の人は馬車に注目する。
町を見るのは本当に久しぶりのような気がする。ほんの数日間離れただけなのだが、お城での出来事はいろいろとありすぎた。人がいる、家がある、電柱があることさえも私にとっては安心感となる。
「そろそろでしょうか」タケミは窓から外を見た。そして私を見た。
イチカワに家までの地図を渡してある。その地図はルリの手紙と一緒に入っていたものだ。だから私が答える必要はないのだが...
私は淡々と「そうですね」と答えた。お城の人には隙を作るべきではない、昨夜の面会からそう感じていた。できるだけ簡潔に答え、冷たいようにも見えるが、一つ間違えてしまえば何かが崩れてしまう、そんな重大な要素があるような気がしてならないのだ。
そしてタケミは私がお城から逃げたあの日から人が変わったようだ。私の行動が登場人物に影響を与えてしまったのだと思う。




