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アミテイル  作者: Yah!結う湯酔~い宵
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2-33 ヴァンパイアの嫁

 そんな状況ともつゆ知らず、私は森の入口にたどり着いた。森には魔物が棲んでいる。そんな所を駆け抜けるなんて自殺と同じだ。だから私には考えがあった。


 「花丸さん、いるんでしょ」


 花丸はこの森を駆け抜けて町からお城へとやってきた。私を抱きかかえて町へ戻ってもらおうと考えたわけだ。


 風は私の背中を押すように森へと誘う。ピューという音と共に森からは何者かの声が聞こえる。しかしその声には聞き覚えはない。


 「花丸さん...?」


 私は後ずさりをしながら警戒をした。きっと花丸が、と希望を抱きながら、光を吸い込む森の奥一点をじっと見つめた。


 「はなまる、さん?」


 足音が聞こえる。砂をジリジリと、大きなものが獣道を走り抜けて雑草を叩き、枝がペキペキとへし折れ、全ての音は息を吸うように一瞬にして消えた。


 私はお城に向かって走り出した。動物的第六感が働き、後ろを振り向かずに全力で走った。しかしその威圧感は突然私の背後まで迫ってきた。もう、ダメだ。


 顔を、体を、足を掴まれそうな感覚に襲われそうになったその時、私は派手にこけた。足がもつれたわけではなく、足を掴まれたわけではない。突然の体の解放に、体が勢いについていけなかった。


 私が恐る恐る振り向くと、そこにはヴァンパイアがいた。ヴァンパイアの奥、よく見えなかったが、私を襲っていた威圧感が森に戻っていくのが分かった。


 「大丈夫かい」ヴァンパイアは私に近づき優しく微笑むと、スッと手を差し出した。


 「はい...」私はその手を取っていいものかと考えたが、自然と手が伸びるのであった。


 「ここはまだ危険だ。一旦、お城に戻ろうか。馬車も用意した」


 お城に通じる一本道の前に馬車があり、イチカワさんが手を振った。


 私は観念、いや好意に甘えたのだろう。ヴァンパイアと共に馬車に乗り込んだ。それが本当に好意かどうかも分からずに。

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