2-31 ヴァンパイアの嫁
ルリの機嫌を損なわないために、相槌を打ちながら、時々「へー」などとリアクションを交えながら店内のレコードに耳を傾けた。
夢中になって話す人は自分の世界に入りやすい。相手の様子なんて見ないし、考えない。尾張が目を寄せたり、歯を見せて笑ったりしても気付くことはないだろう。
「―つまり、私は適合者である可能性が非常に高い」そしてルリは満足そうにコーヒーを飲んだ。自慢にも似た「どう?どう?」と称賛を求めるような態度だった。
「ほう、すごいね」尾張はルリがヴァンパイアの元に行くことだけは分かった。この一言はルリを喜ばせたのだが、尾張にとってはそんなことどうだってよい。「それでなんだけど、どうやってキミとユリ君は入れ替わるんだい?」
現状の話、適合者のルリはここに、ユリことアミはヴァンパイアの居城に、そして町とお城の間には魔物の巣窟である森がある。どうやって入れ替わるのだろう。
「それは...」ルリは考えるそぶりをすると否や、すぐに「手紙を送るわ。親族なら届くでしょう」と提案をした。さらにルリはハキハキとした物言いで「それで私とユリが会うことができれば、入れ替わるなんて容易よ」と言うと、深くうなずいた。
言うには容易だが、それはそれでと、尾張はこっそりと手伝う算段をした。
「後は、キミの研究なんだけれど、誰が引き継ぐんだい?共同研究していた先生とやらはもちろん、いつまでも先生がいるわけではないだろう」
「確かに先生は高齢で、引き継ぐ人は必要だと思う...ただ」ルリは後継者を決めているようであった。「私はユリにやってもらいたい」




