2-30 ヴァンパイアの嫁 〜一方、尾張は 3
「私がやらなければいけないことは、ヴァンパイア様との共存だと思う」
ユリは覚悟を決めるように言ったが、やはり納得がいかない様子だ。ヴァンパイアの元へは「行きたくない」、ヴァンパイアに「頼ってはいけない」と言葉にした反面、『共存』と言うのは悔しいのだろう。
「つまり具体的な行動としては、どうするつもりだい」
「それは先延ばしと捉えられるのかもしれないけれど、共生と依存、いつかはこの両方から脱却するために時間を作って、今は適合者の被害を減らす。適合者が死ぬまで苦しむ病を極限まで減らす。そのために間違いない適合者の選択をする制度を確立させる」
ユリは一口、頼んだコーヒーをゆっくりと飲んだ。
「私はヴァンパイア様の元へ行きます」
「ほう」尾張は想定していた言葉を引き出して満足だった。物語を綴じるにはトリガーとなる行動や言葉が必要で、それがなければ終わることはない。尾張はこの言葉がそのトリガーだと確信した。
「ちなみになんだけど、何で行くことを決めたんだい?」
「それは、私が今の大学院で研究しているから...」
嫌な予感が尾張の頬の筋肉をピクリと緊張させた。そして予感は的中する。
「大学院で適合者について研究している先生に出会って、そこで一緒に研究したの。過去の適合者と非適合者の血液を調べると、ある共通点が見つかって―」
きっとルリは話が長いタイプなのだろう。しかも若い研究者は分かっていることが嬉しくて話したい衝動に駆られる。尾張はそんな分析をしていた。




