2-20 ヴァンパイアの嫁
「病床に伏している方がいらっしゃいます。申し訳ございませんがお静かにお願いいたします」そういえばタケミは、まるで忍者のように音もたてずに静かに歩いていた。
それならば、と私もタケミと同じく音に細心の注意を払って歩く。しかしながら、このお城に病気で寝込んでいる人などいるのだろうか、と疑問に思った。というのは、このお城にいるのは住み込みで働く人たち、ヴァンパイア、くらいではないのか。
「こちらでございます」
あれこれ考えていると、いつの間にか部屋に着いた。
部屋の中は天蓋付きのベッド、アンティークの棚や置物、ペルシャ絨毯、部屋に差し込む月の白い光、華美でありすぎずも質素でもなく、丁度その間のような、間然することがない。だからだろう。わびさびを感じてしまいただ心打たれて、しばし立ったまま部屋の中を眺めた。
到着するも休む間もなくタケミは「お召し替えいたしましょう」と大きなドレスも入りそうな衣装タンスから桃色と小豆色の行灯袴を取り出した。「本日は礼装でなくても差し支えございませんので、こちらでいかがでしょうか」タケミは和服を広げて見せた。すると白粉の香りがふわっと舞い、私の鼻腔をくすぐった。
その可愛らしい和服に、今度は目を奪われ私は小刻みに首を縦に振った。
タケミに促されるまま動き、もはやどのように着付けたのかは分からない。だが鏡に写った私は想像以上にイケてると心の底から思った。
「どう!タケミさん」
「とてもお似合いでございます」タケミは私の脱いだ服をハンガーにかけて、さらに和服に合うブーツを用意した。
そうして私は学生服とスウェットを経て、すっかりオシャレな和ガールになった。
「それではヴァンパイア様の元に参りましょう」
部屋を出た私たちはタケミの案内でメイクルームのような部屋に入った。「ヴァンパイア様に準備ができたことをお伝えして参りますが故、少々こちらでお待ちくださいませ」
一人にされた私は部屋を見渡した。人が通れないような小さな小窓、大きな鏡が付いた化粧台、小さな椅子とテーブルセット、物が多くあるように見えてコンパクトにまとめられていた。




