2-13 ヴァンパイアの嫁
私が何も言えないほどに感激をしていると、店員が注文した品を持ってきた。「お待たせしました。ホットコーヒーとメロンソーダのモーニングです」
私は目の前に並べられるモーニングにさらに感激した。これが喫茶店、これが聞いたことあるけど食べる機会がないモーニングというもの。パンにゆで卵、サラダ、スープ、ヨーグルト、そしてメロンソーダのジョッキ。「ジョッキ⁉」
「ごゆっくりどうぞ」
尾張はコーヒーにミルクと砂糖を入れて入念にかきまぜる。
私はジョッキの飲み物に喫茶店から昨日の居酒屋の雰囲気を鮮明に思い出した。「なんというか、スゴイジョッキね...」
「ジョッキにすごいも何もないだろ」
確かにそうだが、なんとも冷めた人だ。このジョッキにもう少し関心を持ってもよさそうなものだが。
「そういえばなんだけど、」尾張は唐突に切り出した。「キミが会った女性なんだけど、名前は『ルリ』というみたいだよ」
「え?」私はパンにバターを塗りたくっていたが、指も巻き込んでしまった。「何で知っているの?」
「フロントでそう呼ばれていた。物語で名前を呼ばれるというのは少なくともモブではなく『登場人物』だ。だから顔もしっかり覚えたというのに―」尾張はゆで卵の殻をキレイに剥いて塩をパッパッとかけた。そして一口で丸々飲み込むように食べた「キミがそんな顔だから」
「何よ、そんな『顔』って」けなされたような気がして私はムッとした。
「そういうわけじゃないよ...まあ、キミは分かっていないようだからいうけど―」尾張はコンパクトな手鏡を私の前に突き出した。
私はその鏡に写った私と目が合った。整っていない髪が気になる。「尾張さん、そんな鏡を持ち歩いているんだね。意外だよ」
「だよね」尾張は鏡をしまいながら続けた。「キミの顔が変わっていることなんて気付いていないよね」
「え...?」『顔』が変わっている?




