3-71 転生免許
どういうことだろう。「なんでキョウトさんか私をつけるの?幽霊が恐くて調査ができない人だったはずだけど」
「考えられることは、自我が芽生え始めたからだろう。設定通りの登場人物なら性格や好き嫌いが物語の進行上変わることがあっても、基本的には変わることがない」
「なんてこと…」私の脳裏にタケミの顔が思い出された。
「だからキョウトに変化がなさそうでも、キミは一層振る舞いに気を付けることだね」
「…うん」
「だからキミとの連絡を控えたい。基本的にキミから僕に対してはNG。僕からキミに対しては賀門君から伝達するようにするよ。そのタイミングで僕に伝えたい事があった時に賀門君に伝えること」
「手紙はダメ?」
「キョウトに見られた場合のリスクが大きいからNG」
しょうがないか、とため息をついた。しかし気付いたことがある。「今回は何で花丸さんを通じてではなく、直接言いに来たの?」
そんなことも想定済みか、尾張は反射的に答えた。「緊急性」
「緊急性?」
「そう。起こってしまってからだと遅いから、ナルハヤで伝えるべきことだからね。他にもこうやって直接だと、よほど危険な状況かを理解できるだろうし、賀門君を通じてだと、賀門君に伝えて、送って、さらにキミに伝える時間もかかる。後はキミが何か変なことを言った場合、すぐに回答できるだろ」
「変なこと…」分からないことを聞いているだけだ。
「キョウトはタケミと違って、あからさまにキミを詰めようとはしないみたいだ。だからキミが余計なことをしない限りは自我の成長を止めることはできるだろう」
兎にも角にも「うん、分かった。気を付ける」しかない。
「何か質問なければ僕はもう出ていくよ」
「あ」とは言うものの、言いたいのはやはり幽霊調査についてくる約束を破られた文句だったが、尾張の予感が的中していたわけで感謝しろとも言いかねられない。
「何だい?」
「ええと…この前さぁ」明らかに場を繋ぐための切り口だ。「あれがあったの、あれ…ええと」
「何もないなら行くよ」
「いやいや、あるのあるの」そういえばこんなことがあった。「何かね、そんなことないよな、ていう時あるじゃない。なぜか上手いこといっちゃうみたいな、そんなこと」
「ああ、それはたまたまの偶然か、プロットだね」
「プロット?」
「あらすじだね、ザックリ。何か作る時、中継点を作ってから点と点を線で繋ぐ…この物語で例えると、初めにあの集落から始まってキンキラ、レミノリアの順に旅をする、みたいな。その過程でこんなイベントが発生します、のようなものを記したものかな。物語は完結していないけれども、作者のプロットが一部分だけ残ってたみたいだね。その影響で上手くいったのだろう」
「へー」
私はキンキラでエチワカを助けた時のことを思い出していた。
「じゃあ、もう行くよ」
「あ、待って」
尾張は窓に手をかけたところで素早く引っ込めた。「何だい。これで最後にしてくれよ」
「手引さんはいつ戻ってくるのかなって」




