3-71 転生免許 ~自我の芽生え
夕飯までにはまだ時間が十分にあり、私は部屋で休むことにした。「エチワカはどうする?」と話を振ってみると。タタタッとキョウトの背後に隠れた。
「そろそろ仲直りしてくださいよ」とキョウトは勝ち誇ったよう。
不快な言葉その二に私は「それではキョウトさん。エチワカをお願いしますね」と返した。キョウトのマントをよじ登るエチワカを横目に、部屋の扉を閉める頃にはそのマントがどういうわけかキョウトの首を絞めていた。その光景に私はほくそ笑んだ。
扉の鍵を閉めると、大きく一息ついた。ようやく一人になれた。慌ただしい毎日、分からないだらけの世界、予測できない筋書き…幽霊を見たのも初めて、初体験なことばかりだ。
とはいえ、この町のミッションはクリアしたし、きっと数日経てば次の町へ出発するのだろう。
嫌なことばかりを経験したこの町も思い返せば…いや、やはり苦い思い出しかない。
窓に近付き、ここから見る景色もいつかは忘れてしまうだろう。思いふけりながら窓近くの椅子をたぐり寄せ、座ったその途端、窓からニュッと現れた人の目に驚き、椅子とともに大きな音を立てて床に倒れ込んだ。
「やあ、元気そうだね」といつもの調子で窓から入ってきたのは尾張だ。「幽霊調査を終えたんだってね。良かった、良かった」
「尾張さん!?何で窓から…部屋の扉から入ってください」
「それはできないなぁ」尾張は扉に音も立てずに近付き、扉と床のわずかな隙間を静かに覗いた。「うん、誰もいないようだね」そして窓まで戻ると、まるで人目を気にしているかのように窓の横に立った。
「何か用ですか?」
「用だから来たんだ。労いに来たわけではない」
一言余計だ。
「キミも分かっている通り、キョウトのことでね」
「キョウトさん?もしかして『自我』ですか?」
「うん、そうそう。キミの不注意でね」
そのことに関しては以前にも注意されたし、その兆候も何とか抑えたものだと思っていた。
「今朝キミが言ってたことに何か変だな、と思ったから一応キミにも伝えておこうと思ってね」尾張は窓の外を横目で見ながら言った。「僕は昨夜、キミの幽霊調査について行ってない」
「え?」だって昨夜は確かに人影が私をつけていたし…いや、それよりもついてくるって約束したじゃない。何でついてきてない訳?「つまり昨日私をつけていた人は尾張さんじゃない、ということ?」
「そう言ってるじゃないか。察しが悪いなぁ」ムスッとする私を横目に尾張はまた窓の外に視線を変えてを続けた。「昨夜、嫌な予感がしてキミの依頼を無視した。だけだキミは今朝、僕に感謝しただろ?だから僕は宿屋の店主に昨夜キミの他、外に出たものはいないかと確認したら案の定、キョウトだった」




