3-69 転生免許
「そんな…昨夜、私はずっと家にいました」
「いえ、間違いありません。昨夜、私はあなたの幽霊と出会いました」
幽霊の正体、それは戦いで愛する者を失った女達の生霊であり、この地に固執して地縛霊となった。マヨリ以外にも同じ境遇がいるだろう。複数の幽霊が鎮埠周りをうろつき、生死が分からない愛する者を待ち探し続ける。
マヨリはあまりに唐突な展開で驚いた。「なぜそんなことが…」
「マヨリさんがカケノブさんに対する思いが幽霊となって表れているのかもしれません。信じられないかもしれませんが」こんなこと、私だって信じられない。しかし私はその幽霊を見てしまったのだから。物憂げにあまりに遠く、遠く、いくつもの山や谷を越えた先を見て待ちわびる彼女を見てしまったのだから。
「マヨリさん以外の幽霊にも出会いました。思い出してみると、その幽霊は以前に町で聞き込みしたことのある女性と瓜二つでした。その彼女も幽霊を見たことがないと言っていました」
マヨリは思い当たる節でもあるのか、「あっ…」と小さく声を上げた。
「もしかしたら同じ境遇の人には見えない幽霊、もしくはマヨリさんらが鎮埠にいない時に現れる幽霊、たまたま居合わせることはなかっただけ…どうしてマヨリさんが幽霊と合わなかったのか、なぜマヨリさんの幽霊が現れたのか、何かは具体的には分かりませんが、幽霊はマヨリさんであったのは間違いありません」
それは信じ難いだろう。ショックでマヨリは塞いだようにうつむいて固まってしまった。
レミノリアの町、府、マヨリら愛する者の帰りを待つ者たち…このままでは全てが良い方向に向かうことはない。この打開策は行動で示すしかない。「今のままではマヨリさんやマヨリさんと同じ境遇の者たちは一向に前に進めません。戦いに参加した兵士で行方不明となっている者たちについて、改めて調査してもらえるように、一緒に府に掛け合いませんか」
幽霊はどうしたら消えるのかは分からないが、一つ一つ解決することで、いつかはいなくなるのではないか?仮定なんて立てられないのだから、やってみなければ分からない。それにマヨリにとってもカケノブの消息を確かにする良い提案ではないだろうか、良くも悪くも。
「すでに府には、こちらに移住してきた時点でお話をしています。未だに何もないということはそういうことなのでしょう…」マヨリは淋しそうな表情を浮かべた。




