3-66 転生免許
以前はサブキャラであるタケミというメイド、もしかしたら今回は主人公格のキョウト…少しずつであるが、キョウトに自我が芽生え始めているのかもしれない。
ゴブリンに汚された顔を洗い、服を新しいものに着替え、ベッドでスヤスヤと眠るエチワカを見た。仲直りしないとな、と思いながら、優しく頭を撫でると満足するようにニヤッと笑う。どんな夢を見ているのだろう。今度聞いてみよう。
私は宿屋を出て、鎮埠に向かった。前と同じルートから、街灯のオレンジ色の灯りを頼りに夜道を歩く。そして振り向くと、背後から追いかける影が見え、コソコソ物陰に隠れている。ちゃんとついてきてくれているみたいだ。足が軽くなった私は前に幽霊と出会い頭になった場所を忍ぶようにして通り過ぎ、やがて鎮埠に着いた。
鎮埠を囲うように街灯が照らし、それはハッキリと見えた。一人の女性が鎮埠に向かってすすり泣いているのであった。私は恐る恐る女性に近づくと、その人の体を透けて地面が見えた。
幽霊だ、とハッキリ分かったが、以前ほどには落ち着ける。急に現れた訳でもないし、今日は私をつけている人が見守っている。しかし声をかけることもできず、女性は霧のように悲しい泣き声だけを空に残して消えていった。
やはり鎮埠に関係があるというのは間違いない。しかし幽霊が兵士ではなく、市民のようであったが、どういうことだろう。
他にも幽霊がいないか、鎮埠の周りをグルグルと何周か周ってみた。しかし幽霊はいないし急にも現れない。仕方なく、帰ろうかと来た道に入ると、すれ違うようにまたもや私を通過した。その女の幽霊は鎮埠に向かったのは間違いないが、私はそのまま宿屋に戻った。
前みたいに驚いて、走って戻るわけでもなく、その足取りは重くトボトボと…私は察してしまったのだ。
宿屋に戻った私は宿屋の主人に「えんがちょをお願い」と言った。
「アンタ、また幽霊に触ったのかい?」
「うん。だけど、死なないと思うの」宿屋の主人にえんがちょをしてもらい、私は部屋に戻った。
そんな私の亡霊みたいにユラユラと歩く後ろ姿を宿屋の主人は不思議そうに眺めた。
部屋に灯りを付けず、私はベッドに寝転がった。ここまでの道中、今まで得た情報を照らし合わせて理解した、あの幽霊の正体は何かを。
またマヨリさんの家を訪れなければならない。これは私から伝えるべきなのだろう。きっとそういう筋書きなのだ。
私は深く息をし、ゆっくりと吐いた。やがてエチワカの寝息に同期すると、私も暗い穴に落ちていくように、音のない世界へと吸い込まれていった。




