3-59 転生免許
「は、はい…」キョウトの見開いた目はみるみる縮んでいった。「俺はレミノリアでの戦いについて調べました。それでその戦いに参加した兵士を調べていくと、案の定『カケノブ』さんの名前がありました」
「ほう!」とりあえず、キョウトに成果があってホッとした。今日一日徒労で終わるなんて考えたくなかったからだ。
「『カケノブ』という名前は一人だけでした」
「ということは、マヨリさんとは関係がありそうですね」
「そのようですね。もちろんあのペンダントがマヨリさんが何となく拾われたものでなければの話ですが…マヨリさんとの関係を調べようにもそれ以上は分かりませんでした」
戦いの記録だけではそれが限界なのかもしれない。私もここまでの報告で満足していた。
「ただですね―」
おっと今日のキョウトはこんなことでは終わらないようだ。私は耳を大きくして座り直した。
「出生も調べてみたところ、カケノブさんは今で言う同盟の国出身者になります」
「同盟の国?確かマヨリさんも…」
「はい。マヨリさんも同盟の国の内側にいたことを以前に聞いています。カケノブさんも同盟の国の内側に位置する『カンホウ』から徴兵されたようです」
「じゃあ、マヨリさんが『カンホウ』から引っ越してきたかどうか分かれば…」
「いや、もう分かっています。マヨリさんはカンホウの出身者でした」
「え?」あまりにも出来過ぎた返答に思わず疑いもする。「なんで分かるんです?」
「はい。府でこの町の住民帳簿を調べました」キョウトは当たり前のようにサラッと言う。
それってプライバシーを無視していないか?と現実とこの異世界での認識があまりに乖離しており、噴き出しそうになった。
尾張の異世界が嫌いな理由を思い出す。「な、なるほど。それは盲点でしたね」そんな物があるなんてもちろん知らなかった。
「同じ郷にいても二人に接点があったかは分かりません。しかしこれらがたまたまであるとは思えませんので、本人から聞いて事実を確認すべきかと思います」
それはそうだ。点が繋がっているように見える。
「あと一つ、気になることがありまして…」キョウトはあごに手を当て、首を傾げた。「カケノブさん、実はレミノリアでの戦いでお亡くなりになったかは記録にありませんでした。扱いとしては行方不明でした」
「それは…つまり、まだ亡くなっていない可能性があると?」
「あると思いますが、多くの戦いでは行方不明というのは亡くなっていることがほとんどですので、可能性としては限りなく薄いでしょう」
「そうですか…」
キョウトの報告は重要な手がかりになることは言うまでもない。
聞き込みの成果は全くなかったので熱も下がっていたが、真相に近付いたようでまたやる気が湧き出る。
今日はもうじき暗くなるので、調査を切り上げることにした。何かの手がかりになるかもしれないと、明日は戦場を調べてみようという話にはなったのだが、そもそも鎮埠は戦場であった地の中心辺りに建てられており、言ってしまうとこのレストラン、もはや町が元は戦場だった。しかし戦場は町の外にも及ぶほどの広さだ。
それならばと私は気分転換に町の外に出てみようと提案した。町で調べるにも調べ尽くした感は否めなかったからだ。キョウトから提案はなかったが、顔をしかめてあごを触った。




