3-55 転生免許
「いつも気になっていたのですが、エチワカに何を言っているんですか?」
過去に何回かエチワカを落ち着かせたい時に使った魔法の言葉、それは「『企院さん』」である。エチワカには天敵とも呼べる相手であり、未だに企院の前では私の影に隠れる。
するとキョウトはエチワカを呼び寄せ同じ目線にしゃがむと「企院さん」とささやいた。
きっとエチワカに好き勝手に弄ばれている仕返しか何かだろうが、大人げない。
しかしキョウトの思い通りにはならず、エチワカはバシンとキョウトの頬を思い切り叩いた。
「なんで…」キョウトはみるみる赤くなる頬をなで、ただただ痛そうだった。
「たぶん、下に見られているのでは?」
「俺がコイツよりもですか」
続いてエチワカはエイッとキョウトのスネを蹴り上げた。
「痛っ!」
散々な目にあったキョウトに私は不憫に思うも、こういうのを引っくるめてキョウトである。しばらくは温かい目で見守ろう。
「どうぞ」扉が開いてマヨリは私たちを家の中へと案内した。
我先にエチワカはマヨリの横を抜けて家の中へと駆け込み、辺りをグルグルと見回した。
「こらっ。走っちゃダメでしょ。家の中の物にぶつかったりしてモノ壊しちゃうかもしれないでしょ」
エチワカは手を上げて「分かった」と答えた。
「お邪魔します」家に入るとまずはダイニングスペースがあり、その奥には中二階へつながる階段がある。中二階にはキッチンがある。またここから見えるいくつかのドアはどこにつながっているのだろう。少し探検したら楽しそうだ。
ダイニングテーブルに私たちは案内され、マヨリはキッチンからティーセットを持ってきた。ティーカップにお茶が注がれエチワカにカップが渡ると、一瞬で飲み干し「おかわり」と言った。
「ちょっと―」と私は小声で叱ろうとしたが「まだありますから」とマヨリは笑って再度注いだ。
「ご用件というのは何でしょうか」皆にティーカップが渡ったのだが、明らかにキョウトのカップだけお茶が半分も注がれていなかった。
キョウトは眉間にしわを寄せてエチワカをジッと睨むものの、エチワカは気にも留めずに美味しそうにお茶を飲む。




