3-53 転生免許
だが尾張は鼻で笑い「死ぬわけないじゃん」と突き放すように言った。「そんなんで死んだ人なんて聞いたことないけど、この物語でそういう決まりになっているんだったら死ぬかもしれないね」
どうせ尾張からは励ましの言葉なんて貰える訳が無いし、期待もしていなかったが「死ぬなんてバカバカしい」くらいは聞けるかもとは思っていた。しかし「ん?」聞き捨てならないことを確認した。「一般的に幽霊に触れたからって死ぬわけないのに、この物語にいるからって死ぬことがあるの?」
「そういう設定ならね。例えば重力が逆さの物語なら体は空に引っ張られるはずさ。それと同じだね」
私は少し考えたが、やがてベッドに顔を埋めて叫んだ。「死ぬんじゃん!」
「まあ、迷信なら問題ないよ。死ななかった人もいるってことは、迷信だと思うし」
「本当?」
「嘘ついてどうなるんだよ」
確かに嘘を言っているようには見えないが、私は尾張の底無しの意地悪さを知っている。「本当に?」
「しつこいな。本当だって」尾張はヤレヤレと首を振りイスに座った。「あと、そこ、僕がオナラをしたところだから」尾張は私が顔をうずめた箇所を指差した。
私が素早くベッドから離れると、その様子を見た尾張はケラケラと笑う。「嘘だよ。ほら、早く出てって物語を終わらせてくれって」
本当に意地悪だ。私は部屋を出る時に「バカ」と捨てゼリフを吐いて思い切り扉を閉めた。
部屋に戻ると、やはりというよりももはや定番、エチワカがキョウトの手を煩わせていた。しかしエチワカが私を見るなり私の足に抱きついた。
「いつになってもキョウトさんには懐きませんね」私はエチワカを抱きかかえた。
「俺もよく分かりません」キョウトは解せないように口をひん曲げる。「あれ?」とキョウトは私を見て「さっきよりだいぶスッキリとしたお顔ですね。体調が良くなりましたか?」と新芽を見つけたように言った。
「そうですかね」
エチワカは両の手で私の頬を挟み顔を歪ませると、キャハハと笑った。




