3-47 転生免許
「この町に来る前に、キンキラも寄られたのでは?」
「はい。物資の補給のために寄りましたが、府にも行きましたよ」
「そうですか。飛砂に会いましたか。元気でしたか」
「飛砂さん?」私は疑問に思った。何か縁でもあるのだろうか。「お知り合いで?」
「はい。飛砂とは『精養院』の同期です。もちろん企院先輩の後輩に当たります」
精養院とは寮がある学校のようなものだろうか。私もそこにいた可能性はあるので、下手に話を広げられない。「そうだったんですね。飛砂さんには会いましたよ」とすぐに話題を変えた。「飛砂さんはイスを作っていました」
「いす?」琅邪は眉間にシワを寄せていたが「暇なのでしょうね」とキンキラの府の様子をズバリ言い当てた。「精養院の頃からやれば何でもでき、面倒くさがり屋。だけど熱中することにはトコトンと。違う方向に熱が入ってしまったようですね」
話を聞く限り、琅邪と飛砂は本当に長い付き合いがあったのだろう。琅邪の遠くを見るような目がその長さを物語っている。
「ということは、変わりなさそうですね。それは良い話を聞けました」琅邪は胸を撫で下ろした。「ところでですが、私から竜頭さんに一つお願いしたいことがあります」
「お願いですか。どんな内容でしょうか」何となく、私はその内容を知っている。
「実はこの町に―」
琅邪の話す内容はマヨリから聞いた幽霊のこと。府は幽霊のことに構えないほど忙しく、ギルドに依頼を出した切り一年以上が経過した。そして堂々と訪れてきた私に白羽の矢が立ったようだ。
「私に解決できるでしょうか」
「手紙にはとあることに目を瞑るなら、どんなお願い事も聞いてくれる使者を遣わす旨が書かれておりましたので、きっと願いを叶えてくれると信じております」
そんな無茶苦茶な。それでも答えは一つしかなかった。それがこの物語を終わらすための必要な経過なのだと思う。「分かりました。承りましょう」頑張ろうと顔は作っているが、心は企院に振り回されて泣いている。
「なんと勇ましい。宜しくお願いいたします」
半ば一方的で断れない助け合い。後でエチワカの正体をバラすような、約束を反故にすることはないだろうが、そもそも幽霊を成仏させることなんてできるのかが心配だった。
「今度は企院先輩もぜひ立ち寄ってくださるようにお伝え下さい」
笑顔の琅邪に見送られ府から出ると、私たちが府に入った時と足の位置が変わらないのではないだろうか、ヒザをガタガタと震わせて立っているキョウトが私たちの帰りを待っていた。
「お待たせして申し訳ございません」キョウトの存在などすっかり忘れていた私だが、表情に出さないように努めた。
「…いえいえ、これも務めですから」キョウトはそう言うものの、ゆっくりと足を前に出しては足一つ分も歩いていない。
「先に馬車に戻ってますね」可愛そうだが呆れが勝った。
「ま、待ってください」とキョウトは言うものの、変わらずロボット歩きでなかなか進まない歩行が続く。
私とエチワカは手をつなぎ、先に馬車に戻った。




