彼女たちはただ、遠い遠いところへ行っただけです。
いつの間にか、これは当たり前の景色になっていた。
鐘の音はかすれ、塔から響き渡り、無限の時間と空間の中で哀しげに鳴り響く、まるで遠い世界からの嘆息のようだ。星屑の微風は漂うように、重いステンドグラスに寄せては返し、古の挽歌を奏でる。
イニンは快適で柔らかなベッドに横たわり、窓の外の変わらぬ景色を虚ろな瞳で眺めていた。
もし彼らがここにいたなら、きっとこのベッドよりもっと心地よい草原の上で……陽の光を浴びてはしゃぎ……追いかけっこをしていただろう。
もし彼らがまだここにいたなら……。
両手は無意識にシルクのシーツを握りしめ、目の前の景色がぼやける。
はあ……やっぱり涙が出ちゃった、わたしは本当に……自分で思っていたよりずっと弱いんだね。今の私には……もう何も残っていない。
「きい……。」押し掛けていたドアが開かれた。イニンは振り返らなかった。来る者が誰であろうと、もはや彼女には意味がなかった。
あの時以来……『幽暗の間』事件の後、イニンは一日にして『喰けの蛇』出身の全宇宙トップクラスの殺し屋であり、数多の孤児を養う母であった立場から、全てを失ったただの少女と化してしまったのだ。
家族は虐殺されつくし、家も無情の炎に飲み込まれた。命をかけて愛したすべてが、たった一日で無惨に奪い去られた……ほんの数分前まで、彼女はまだ夢想していた……陽に照らされた草原を、草原に咲く花の香りを、陽光と草原の間で追いかけっこする家族たちの姿を……。
もしこれが全て、自分が『神』とやらに祈らなかったが故だとしたら……そんな虚ろな『神』は……あまりにも残酷すぎる。
「あなた……いつまでわがままを続けるつもり?そんなに廃れたように寝転がっていれば、彼らが生き返るとでも思ってるの?」ユーナの口調は鋭いが、目に映る心痛は偽りようもなく……あの人物にここへ連れて来られてから、イニンはずっとこんな様子だった。まるで人形のように硬直したままベッドに横たわり、窓の外を眺めている。
そう、人形のように……今に至るまで一度も動こうとしない。
「そうだよ、もう二度と会えないんだ……命をかけて守ると誓ったものが……ほんの数分で何もかも消えちゃった!」イニンは起き上がった「もう彼らは戻ってこないんだから……だったら……だったらわたしも彼らのところに行っちゃえばいいんだ!」イニンの声は泣き声を帯び、すでに曇っていた両目からついに涙が決壊した「なんでこんなに不公平なんだ!わたしの人生なんて……。」
自暴自棄になるイニンを見て、ユーナは歯を食いしばり、ベッドに飛び乗って彼女を強く押し倒した「何てバカなこと言ってるの……あの世で彼らに会えたって喜ぶと思う?このバカ、カリンが誰を救うために死んだか忘れたんじゃないの!」
宇宙の星明りが斜めに差し込む中、ユーナの両目は前髪の影に隠れていた。冷たい液体が数滴、イニンの頬に落ちた。ユーナは彼女の肩を掴む手に次第に力を込めていった「彼らの死を悲しんでいるのは、あなただけだなんて思わないでよ。このバカ、もし私一人だけになったら、わたしはどうすればいいの!?」ユーナもまた軽くすすり泣き始め、涙の粒が雨のようにイニンの顔に滴った。冷たい涙のはずなのに、なぜか彼女には熱く感じられた。
記憶の奥底に封印されていた一光景が脳裏をよぎる……思い出の中でも、彼女たちはこんなふうに泣き合ったことがあったっけ……ただ、あの時と二人の立場はちょうど逆だっただけ。無意識に、このすすり泣く少女を腕の中に抱き寄せ、そっとその背中を叩いてあげた……まるで、あの時彼女がしてくれたように。
今は……またただあなただけがそばにいてくれるんだね……ユーナ。
無限の宇宙の星明りが開け放たれたステンドグラスを通して、柔らかに抱き合い心の傷を癒やす二人の少女を照らしている。
......
......
ジョイ家の庭。
宇宙の星明りに赤く染まった大樹の太い枝に、シンプルなデザインのブランコがひとつ下がっている……かつて星は仕事の後にいつもここに座り、果てしなく広がる風景を眺め、宇宙の星辰の運行を見つめていた。
今となっては、彼女はもう二度と帰ってこない……。
寝る前に温かいミルクをそっと運んでくれる人はもういない。
無限の宇宙への遊びに、無邪気についてきてくれる人ももういない。
暗闇を怖がって枕を抱えて一緒に寝ようとする人ももういない。
けれど……彼女が残していってくれた、一番大切なものがある。彼女が残したこの永遠の記憶、決して忘れることのない思い出は、ずっとずっと、わたしのそばにいてくれる。
今、エラはこの真紅に染まった庭を何度も行き来しながら歩いている。まるで星が踏んだ全ての足跡を辿ろうとするかのように。最後に彼女はそのブランコの前で立ち止まり、指先でブランコの黒光りする木の座面を優しくなでた。愛しい人に触れるように柔らかに。
ブランコに腰を下ろし、目の前の風景……星はきっときっと、とてもよく知っていたんだろう。そう思うと、また温かい涙がエラの頬を伝った。なんて……絶望的な思い出なんだろう。一度だって……一度だって私は星と一緒に、彼女が見慣れた景色を眺めたことはなかった。一度だって……彼女と同じ景色を見つめ合ったことはなかった。
「もうっ~エラ、またここに来てたんだ。どこを探してもエラがいないわけだよ。」シェリは両手を背中に回し、エラの後ろに歩み寄ると、彼女と一緒に眼前の風景を眺めながら、耳元でささやいた「本当に美しいね、エラ、また星のことを想ってるんだ……もう、エラって子供みたい。星がほんの数日いないだけでこんなんだから、星が知ったらどれだけ心配するか分かってるの?」
シェリの、子供っぽさを必死に大人びさせようとする声に、エラは思わず微笑んだ。シェリの小さな頭を慈しむように撫でながら、エラは庭の景色を見つめてぼんやりと言った「そうね、星は旅に出たのよ……とっても遠い遠いところへ……ずっとずっと長い時間をかけて帰ってくるんだから……でもきっと帰ってくるわ……絶対に……。」
シェリは小走りにエラの元へ寄ると、つま先立ちでエラの膝の上によじ登った「そういえば星ってどこに行ったの?本当に帰ってくるの?姉様も詳しく教えてくれなかったし……。」
エラはブランコをそっと揺らしながら、しばらく沈黙を保ち、やがて口を開いた「星はね……夢のような場所に行くって言ってたのよ。そこには優しい春、まばゆい夏、寂しい秋、そして寒い冬があって、永遠に枯れない花が咲いている……まるで『天国』みたいなところだって。」
「おお……。」シェリは分かったような分からないような顔でうなずいた「じゃあ星はきっとあそこが好きなんだね!星はあそこですごく幸せで幸せなんだろうな!」シェリは突然振り向いてエラに笑いかけながら言った「でもエラは絶対ついていかないよね、エラはシェリを離れない、姉様も離れない、だよね!」
「うん……そうだね、私はずっとずっとシェリとジョイ姉様のそばにいるよ。ずっとずっとね……。」エラは両手でシェリの頬をちょっとつまんだ。
「きゃ!エラ!」シェリは勢いよくエラをブランコから押しのけたが、自分もエラの膝の上に座っていたため逃れられず、二人揃って草地に転がり落ちた。星明りに金色に染まる芝生の上で戯れあう二人の姿は、美しい一枚の絵巻のようだった。
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